クラーク国際空港(Clark International Airport)は、フィリピン・パンパンガ州に位置する郊外型の国際空港で、アンヘレス周辺を目的地とする旅行者にとっては、現実的かつ使いやすい選択肢となる空港だ。LCCや深夜便の発着が多く、NAIAの混雑を避けたい場合にも候補に挙がる。
一方で、マニラ中心部へのアクセスを前提に使う空港ではない。マニラ市内からは距離があり、都市空港のような即時性や柔軟性を期待するとギャップが出やすい。
本記事では、実際にクラーク空港を利用した体験をもとに、ターミナル構成、動線、空港内サービス、深夜・早朝利用時の注意点を整理する。
「この空港は自分の旅程に合うのか」を判断できることを目的としたガイドだ。
なお、クラーク空港からアクセス可能なSMクラークやアンヘレス・NAIA全体の交通については、マニラ/アンヘレス交通ガイドで全体像を整理している。
ターミナル構成とフロア構成

クラーク空港のターミナル構成はシンプルで、初利用でも動線に迷うことはほぼない。
施設全体の公式なフロア案内や基本情報は、クラーク国際空港の公式サイトにも掲載されているが、実際の利用感としては現地の案内表示だけで十分に把握できる。
1階(地上階)|到着フロアと交通接続

地上階は到着フロアとして機能しており、タクシー・Grab・バス乗り場への動線がそのまま外部交通につながる。空港でよく見られる王道の構成で、到着後にすぐに交通機関にアクセス可能だ。


国内線・国際線で到着出口は分かれているが、いずれも到着専用で再入場は不可。一方、出発フロアは出入り自由なため、到着後に下見で上階へ上がることもできる。1階出口付近には将来計画としてNSCR(南北通勤鉄道)の案内展示も設置されている。
なお、1階にはスターバックス(7:30〜24:00)と、バス乗り場付近にコンビニ(Uncle John’s)もあり、到着直後の軽い飲食や買い物はこの階で完結できる。
2階|航空会社オフィス階(旅客向け機能はなし)

2階は航空会社のオフィスやバックヤード的な役割が中心で、旅客向けの施設はほとんどない。通行自体は可能だが、旅客が立ち寄る理由はほぼないフロアだ。
3階|出発フロアと主要サービス

3階が実質的な空港の中枢。チェックインカウンターをはじめ、インフォメーション、両替、キオスク、ベンチ、ラッピングサービス(荷物包装)コンビニ、カフェなど、旅客向け機能が集約されている。

タクシーは3階の出発階まで直接乗り入れ可能。

レストランフロアと制限エリアの様子
3階奥からは、吹き抜け構造を活かした上階のレストランフロアへ移動できる。店舗数は多くないが、座席には余裕があり、混雑も少ない。
出国審査後の制限エリアには、免税店やカフェ、お土産店などが一通りそろっており、設備水準は一般的な国際空港と同程度である。
ターミナルは新しく、暖色寄りの照明と木材を使った内装が特徴で、全体に開放感のある造りとなっている。
市内・アンヘレスへのアクセス概要
クラーク空港からアンヘレス市内やSMクラーク周辺へは、タクシー、Grab、バスなど複数の選択肢がある。
実際にクラーク空港からSMクラーク・アンヘレス市内へ移動した際の所要時間や使い勝手については、別記事で詳しく整理している。
タクシー・Grab(近距離なら最適)
到着フロア(1階)から、タクシーおよびGrabのピックアップエリアへ直接アクセスできる。Grabは専用の案内・予約ブースもあり、初めてでもわかりやすい。
アンヘレス市内やクラーク経済特区周辺が目的地であれば、所要時間・手間のバランスが最も良い選択肢になる。
バス(P2Pバスを含む長距離移動)
長距離移動の主軸になるのがバスだ。バス乗り場は、出発階の出口から横断歩道を渡り、約200m先に設けられている。P2Pバスも同じバス停から発着し、マニラ首都圏や主要拠点への直行便として利用されている。
P2Pバスは、NAIAとクラーク空港を結ぶ空港間移動も想定された路線で、LCC利用や深夜便の乗り継ぎ手段として一定の需要がある。ただし、航空ダイヤと連動した交通機関ではなく、時間に余裕を持った利用が前提となる。
逆ルート、アンヘレスを拠点にクラーク空港へ移動する具体的な方法については、別記事で実地検証している。
深夜・早朝の注意点

クラーク空港は深夜〜早朝帯の発着がある空港で、利用シーンは大きく2つに分かれる。深夜にフライトが到着するケースと、早朝便に備えて深夜のうちに空港へ入るケースだ。
いずれの場合も、深夜帯は空港内の機能や交通手段に制約が出る。レストランは閉店しており、夜間に利用できる飲食は24時間営業のコンビニやカフェに限られる。また、P2Pバスは24時間運行しているものの、深夜帯は本数が減り、時間帯によっては待ち時間が発生する。
実際に確認した限りでは、NAIA行きのP2Pバスは22時〜24時頃に2時間近く間隔が空く時間帯があり、到着時刻によっては待ちが発生する。深夜帯でも移動手段が完全に途切れるわけではないが、時刻表確認は必須だ。
そのため、深夜・早朝にクラーク空港を利用する場合は、到着後すぐ移動するか、空港内で朝まで時間をつなぐかをあらかじめ想定しておく必要がある。
👉 深夜に到着した場合や、早朝便に向けて深夜から空港入りする場合、クラーク空港で実際にどこまで過ごせるのかは気になるところ。
空港泊が現実的な選択肢かどうかについては、別記事「クラーク国際空港で空港泊してみた体験談」で、実際に一晩過ごした視点から詳しく整理している。
空港内サービス・設備の実用度
クラーク空港内のサービスは、「必要最低限はそろっている」という評価になる。NAIAのような選択肢の多さはないが、深夜便やLCC利用を想定した実用性は確保されている。
コンビニ・飲食(深夜対応)
旅客向けサービスは主に3階の出発フロアに集中している。24時間営業の7-Elevenがあり、飲み物や軽食の確保ができる。カフェのBluesmithも24時間営業で、時間帯を問わず利用できる点は心強い。


レストランは上階のレストランフロアを中心に数店舗あるが、深夜帯は営業していない。夜間に利用できる飲食は、24時間営業のコンビニ(7-Eleven)やカフェに限られる。
Wi-Fi・充電環境
空港の無料Wi-Fiが提供されており、館内の案内に従って接続する形式となっている。カフェ独自のWi-Fiではなく空港Wi-Fiの利用が前提で、実際に使ったが軽い作業や調べ物であれば支障は感じなかった。

また、通信事業者による充電スポット(Charging Station)も設置されており、スマートフォンの充電環境はある。
両替・インフォメーション

両替所は1階と3階の両方に設けられている。レート面で市内より有利ではないため、到着直後の最低限の両替用途と割り切って小額がおすすめ。
なお、空港内の両替レートとアンヘレス市内の両替所を実際に比較した結果については、別記事で詳しく整理している。
3階にはインフォメーションカウンターがあり、初めて利用する場合でも動線や施設について確認できる。

将来計画|NSCR構想とクラーク空港
クラーク空港の将来像として、現在進められているのがNSCR(南北通勤鉄道)構想だ。現時点での利用可否には直接影響しないものの、空港の立ち位置を理解するうえでは押さえておきたい計画である。
NSCRとは何か
クラーク空港の到着階には、NSCR(North–South Commuter Railway:南北通勤鉄道)に関する案内展示が設置されている。NSCRは、将来的にマニラ首都圏とクラーク周辺を鉄道で結ぶことを目指した国家規模のインフラ計画で147kmの通勤鉄道プロジェクトだ。


この鉄道が完成すれば、マニラ方面からクラーク空港へ道路に頼らない移動手段が生まれることになり、長距離移動の選択肢が広がる。空港内の展示も、そうした将来像を示すものだ。
進捗と現実的な完成時期
一方で、進捗はまだ途中段階にある。2025年末の現地経済紙 BusinessWorld によると、NSCRは列車を「いつ・誰が運行するか」を決める運営・保守(O&M)の入札手続きがようやく本格化した段階で、実際の運行開始は区間ごとに段階的になる見通し。
同報道では、北側の一部区間での部分開業は2027年末以降、クラーク空港を含む区間の実用化はさらに先とされており、全体が本格的に機能するのは2030年代初頭(2032年頃)が目安とされている。
(参考:NSCR O&M contract seen attracting strong interest – BusinessWorld)
なお、このNSCR計画には日本の政府開発援助(JICA)による融資が活用されており、運営面の入札には東京メトロやJR各社など日系企業も関心を示していると報じられている。日本の鉄道やインフラ整備の進め方を知る読者であれば、完成までに時間がかかる一方で、長期的に整備が進められる計画であることはイメージしやすいだろう。
今の移動判断には影響しない
NSCRは、将来的には期待できるが、近い将来に使える移動手段ではない。クラーク空港の利用にあたっては、当面の間はこれまで通りP2Pバスやタクシーを前提に移動を考える必要がある。
まとめ|クラーク国際空港はどんな人向けか
クラーク空港は、使い方がはっきり分かれる空港だ。空港そのものは新しく、ターミナル構成や動線は分かりやすい。一方で、立地とアクセスの制約は明確で、目的地を誤ると不便さがそのまま表に出る。
この空港が向いているのは、アンヘレス周辺を目的地とする人、あるいはLCCや深夜便を利用する人だ。到着後の移動距離が短く、NAIAのような恒常的な混雑も少ないため、条件が合えばストレスは小さい。深夜帯でもP2Pバスやタクシーといった移動手段は確保されており、最低限の空港機能は成立している。
一方、マニラ中心部への移動を主目的とする場合は明確に不利になる。距離があり、P2Pバスや長距離移動が前提となるため、時間・体力の消耗は避けられない。空港直結鉄道もなく、都市空港の感覚で選ぶとギャップを感じる。
位置づけとしては、クラーク国際空港は東京圏でいう成田空港に近く、NAIAは羽田空港に相当する存在だ。ただし、両者を結ぶ鉄道網が未完成である点は大きな違いで、空港間の移動は今もバスや車に依存している。
NAIA側のターミナル構成や乗り継ぎの考え方については、
ニノイ・アキノ国際空港(NAIA)を初めて使う人向けに整理した記事で詳しくまとめている。
総じてクラーク国際空港は、
「近い人には便利で、遠い人にははっきり不便」
という性格の空港だ。NAIAの代替として無条件に選ぶのではなく、目的地・到着時間・移動手段を踏まえて割り切って使うことで、はじめて快適さが生きてくる。



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