【ホーチミン・メトロ1号線】Rach Chiec駅(ラチチェック駅)|都会と郊外の境界に立つ静かな高架駅

ホーチミン・メトロ1号線Rach Chiec駅のアイキャッチ画像。駅構内の案内板と背後に広がる住宅街の風景。交通・移動
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※本記事の内容は筆者が2025年10月に現地を訪れた際の取材をもとに構成しています。

ホーチミン・メトロ1号線の各駅を現地取材で紹介するシリーズ第7回は、Rach Chiec駅(ラチチェック駅)。
都会エリアと郊外エリアのちょうど境目に位置し、開発の進む街並みと自然の残る風景が共存する。
駅周辺の雰囲気や周辺スポット、現地カフェ情報もあわせて紹介する。

ホーチミン・メトロ1号線の第7回は「Rach Chiec(ラチチェック)駅」である。
ベンタイン駅からおよそ25分で到着する郊外入口の駅であり、隣のAn Phu駅までは高層マンションが立ち並ぶ都会的なエリアが続くが、この駅を境に風景が大きく変わる。西側には高層ビル群を望みながらも、東側には木々が一面に広がり、いかにも郊外の入口といった空気が漂っている。
まだ市中心部の雰囲気をわずかに残しつつ、次第にローカル色が強まっていく――そんな「境界感」が感じられる駅である。

駅は相対式ホームを備えた高架構造で、全体的に明るく開放的なデザインとなっている。
構内は清潔で、トイレも設置されている。造りそのものは他の郊外駅と大きな違いはなく、使いやすいが個性は少ない。
高架ホームからはベトナムの青空と、遠くに見えるビル群が重なり、ホーチミンの都市拡張のダイナミズムを感じさせる。

Rach Chiec駅ホームからAn Phu方向を望む
高架ホームからAn Phu方面を眺めると、都会のビル群が近くに見える。

駅の南東側、Exit3から続く歩道橋を渡ると、Vo Nguyen Giap通りの向こうに広大な林が広がる。ここは「Rach Chiec National Sports Complex」と呼ばれる大型スポーツ施設の建設予定地で、かつては東南アジア競技大会(SEA Games)の開催候補地として構想された場所でもある。
しかし、2025年時点では開発はほとんど進んでおらず、30年以上にわたって未着工状態が続いているという(VnExpress, 2024年報道)。
最近では、ベトナムの大手不動産グループSun Groupが同計画への投資提案を行ったことも報じられている(Vietnam.vn, 2025年7月)。

Rach Chiec National Sports Complex予定地が奥に位置している
開発の進まないスポーツ複合施設予定地。自然が多く静かな一帯。

現地を歩くと、木々が生い茂る静かな一帯が広がり、ローカル商店がぽつりぽつりと並ぶだけである。

Rach Chiec駅周辺のローカル通り

もし今後スタジアムが完成し、イベントが開催されるようになれば、この駅の価値は一気に高まるだろう。しかし現状では静寂そのもので、都市の喧騒から離れた別世界のような空間が広がっている。

一方、西側に出るとローカル住宅が並ぶ落ち着いた街並みが広がる。高層ビルこそ見られないが、都会寄りの影響を受けた少し洗練された雰囲気もあり、道沿いには小さなカフェや食堂が点在している。
郊外駅を巡ってきた筆者にとっては、久々に「街の息づかい」を感じられる場所であった。

Rach Chiec駅西側のカフェと商店

駅から徒歩圏にもローカルらしからぬ洒落たカフェがいくつか点在しており、その中の一つが「Nam’s Coffee & Cake」だ。徒歩5分ほどでアクセスできる。

Nam’s Coffee & Roasteryの外観

木々に囲まれた隠れ家のような外観で、店内はアンティーク調の家具や木材を活かした温かみのある空間になっている。小さな池の上に石道が渡され、鯉が泳ぐ。

カフェ中庭の鯉の泳ぐ水辺エリア
池にかかる石道が印象的な中庭。自然と調和した造り。
カフェ店内の様子
木材とアンティーク家具を活かした温かみのある店内。

カフェというより、空間そのものを楽しむ場所といった印象である。ベトナム人の若者たちが写真を撮りながらくつろぐ姿が多く見られた。

筆者が注文したのはアイスラテ。二層になった美しい見た目に加え、グラスの下に水滴を吸収する受け皿が敷かれているなど、細かな気配りが感じられた。

アイスラテと吸水受け皿

トイレ・Wi-Fiも完備しており、営業時間は7:00〜21:00。
作業スペースというよりも、友人と語らいながら過ごすのに向いたカフェである。
Google Mapはこちら → Nam’s Coffee & RoasteryInstagram公式

駅の北側には「Rach Chiec Bridge Martyrs Memorial(戦没者慰霊碑)」がある。

Rach Chiec Bridge Martyrs Memorial

この場所は、ベトナム戦争中に激しい戦闘が行われた地域の一つであり、多くの兵士がこの橋付近で命を落としたとされる。現在は赤茶色の記念碑が静かに建ち、周囲は整備された小公園になっている。今も地元の人々が訪れる、静かな祈りの場所である。

Rach Chiec駅は、都会から郊外へと移り変わる風景の“入口”に立つ駅である。
現状では観光的な要素は少ないが、将来的にはスポーツ施設や住宅開発が進む可能性を秘めている。
周辺の静けさの中に、確かに次の発展の気配が漂う。ホーチミンの“変わりゆく境界線”を感じたい人にとって、立ち寄る価値のある駅である。

Vo Nguyen Giap通り沿いの工事風景
周辺では道路整備が進行中。将来の開発を感じさせる光景。

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次回は隣の「An Phu駅」を紹介します。
→ 【前回】Phuoc Long駅の記事はこちら|コンテナに囲まれた異色の高架駅
→ 【次回】An Phu駅の記事はこちら|高層マンションが並ぶ都会的な駅(予定)

Ho Chi Minh City Metro – Rach Chiec Station Guide
(英語サイト。駅の位置・構造・マップ情報を掲載)

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