フィリピンの地方都市でiPhone紛失…奇跡の返却までに起きたこと

iPhone、フィリピンで紛失 → 戻ってきた奇跡 お役立ち情報・豆知識
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フィリピン・ミンダナオ島北部にある地方都市「ブトゥア(Butuan)」。人口は約30万人ほどだが、観光客でにぎわうマニラやセブとは比べものにならないほどのんびりしている。
空港は小さく、到着ロビーを出ればすぐに熱気とバイクの音に包まれる。街の中心部も、高層ビルはほとんどなく、ローカル食堂や小さな商店が並び、夕方にはトライシクルが道いっぱいに走る。
そんな「日本人をほとんど見かけない場所」で、まさか自分が人生トップクラスの冷や汗をかくことになるとは、この時は思ってもいなかった。

ブトゥアンの詳しいアクセス方法や街の様子については、別記事【ミンダナオ島】日本人が誰も行かないButuan cityのアクセス・みどころ】で紹介しているので参考にしてほしい。

Butuanシティの通りのイメージ。トライシクルとバイクが多い。

今回の旅の目的は、友人と付き添いと、その土地の雰囲気を感じることだった。ブトゥアンに到着した初日、フィリピン人の友人が用事で市役所に行くというので、付き添いがてら同行することにした。市役所まではタクシーを利用し、特に問題もなく移動は完了。フィリピンの地方都市は交通量も控えめで、空気ものんびりしていて快適だった。

降車してからしばらく経ったとき──ポケットの中が妙に軽いことに気づいた。
嫌な予感がしてカバンやポケットをまさぐるも、どこにもない。iPhoneが、ない。しかもケースの中にはクレジットカードと日本円(一万円札)まで入っている。財布とは別にしていたのが仇となった。
頭の中で「やってしまった…!」と声にならない悲鳴が響いた。

何度も電話をかける

すぐに友人の電話からiPhoneへコール。だが、何度かけても応答なし。
心臓はバクバク、額にはじわっと汗。タクシーはすでにどこか遠くへ行ってしまったはずで、追いかける術はない。タクシー会社に連絡を試みるも、レシートなどはなかったため、車両番号もドライバーの名前も不明。まったく手がかりがないまま、ただ時間だけが過ぎていく。
「このまま消えてしまうのか…」という不安と、「まだ誰かが拾ってくれているかもしれない」というわずかな希望が入り混じっていた。

約1時間半後、ようやくつながる電話

1時間半後、友人の電話に拾い主が応答。無事にやりとりがつながった瞬間、胸の奥が一気に熱くなった。聞こえてきたのは、英語混じりの優しいフィリピン人の声だった。
このときはまだ知らなかったが、拾い主はすでにFacebookにも「日本人の落とし物です」と投稿してくれていた。

話を聞くと、その人物はタクシーの次の乗客だったらしく、私のiPhoneを座席で発見。なんとそのまま保持しながら、Facebookに「日本人の落とし物を見つけた」という内容の投稿までして、持ち主を探してくれていたのである。まさかそんな善意の持ち主がいるとは思ってもいなかった。SNSで拾得物をシェアしてくれるという文化がここまで根づいているとは、本当に驚きだった。

Facebookへ拾得物の持ち主探しのポスト(実際の投稿画面)
実際のFB投稿画像(投稿者名は削除)

その後、拾い主との待ち合わせ場所を決め、友人と一緒に向かった。ブトゥアンの街なか、病院待合室での対面。子連れの女性で、表情はとても穏やか。手渡されたiPhoneは傷ひとつなく、同封していたクレジットカードや1万円札もまったくそのままだった。こちらが何度も感謝の言葉を述べると、「大丈夫です、あなたが見つかってよかった」と微笑んでくれた。礼として少額の謝礼を渡そうとする、少しためらった表情を見せたが受けとってもらえた。あの瞬間の安堵感は、言葉では言い尽くせない。

フィリピンは治安が悪いという印象を持つ人も多いだろう。実際に、都市部ではスリや置き引きがあるのも事実である。しかし、今回の出来事はそのイメージを覆す体験であった。ブトゥアンの街は、観光地ではないぶん地元の人々が素朴で誠実な印象を持った。そして今回、iPhoneを拾って届けてくれたその女性の行動は、何よりそのことを裏付けるものであった。

今回の件で、あらためて痛感したことがある。それは「今や財布を失うよりスマートフォンを失う方が、はるかにダメージが大きい」ということだ。スマホがないと、Grabで配車もできない。ホテルの予約も確認できないし、航空券の情報にもアクセスできない。さらに、土地勘のない海外では、地図アプリも検索もできず、街の中で自分がどこにいるかさえ分からなくなる。財布をなくしてもカードや現金があればなんとかなるかもしれないが、スマホがないと「現代の旅人」はほぼ詰む。

今回、運良くiPhoneは戻ってきたが、もし戻らなかったら…その日のうちに飛行機で帰国する方法を探すことになっていただろう。現地通貨も少なく、クレジットカードも使えず、完全に詰んでいた可能性が高い。

幸運だったのは、善意の人に拾ってもらえたことと、友人と行動していたことだ。とはいえ、そうした偶然に頼るのではなく、今後はもっとしっかりと持ち物の管理をしなければならないと強く思った。

旅は楽しい反面、ちょっとしたミスが命取りになる。今回の出来事は、ただのハプニングではなく、自分の管理意識を引き締める良い機会となった。これから海外を旅する人にも、ぜひ伝えたい。「スマホは財布よりも大事」――この事実を胸に、持ち物管理には万全を期してもらいたい。

そしてフィリピン、特にブトゥアンのような地方都市には、実はこうして親切な人々が多く暮らしている。表面的なイメージや治安情報だけで判断せず、自分の目で確かめることの大切さもまた、今回の旅が教えてくれたのであった。

フィリピンの地方都市イメージ
  • 紛失時はすぐに電話をかけ続けてみる
  • フィリピンの場合現地でよく使われているSNS(Facebook)で情報を拡散、チェック
  • 海外でも親切な人は必ずいる。フィリピン地方都市ブトゥアンでは特にそう感じた

失くしたと思ったiPhoneが、無傷で手元に戻ってきた。
あの瞬間の胸の高鳴りと安堵感は、フィリピン生活の中でも一生忘れないだろう。

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