NAIAターミナル1は本当に安全なのか?|昔の評判と、いま現地で感じたこと

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「マニラは治安が悪い」「空港に着いた瞬間から気が抜けない」
そうした先入観を持ったまま、マニラに降り立つ日本人は少なくない。
そうした不安を象徴する存在として、しばしば名前が挙がるのが、ニノイ・アキノ国際空港のターミナル1(T1)である。

私自身、初めてフィリピンを訪れたのは約15年前で、そのときの到着がT1だった。
入国審査を終え、荷物を待つ間にトイレへ入ったところ、清掃員から突然チップを求められた。
まだ到着ゲートを抜けきる前の出来事であり、「空港の中ですら、こういうことが起きるのか」と強く印象に残っている。

この体験が特別だったとは思っていない。
むしろ、以前のT1を知る人にとっては「よくある話」と受け止められる類の出来事だったはずだ。

T1の悪評は、ある時期に突然生まれたものではない

NAIAターミナル1の到着フロアから見た出口
到着フロアから見た出口(2025年12月)

ターミナル1の悪評は、特定の事件や一時的なトラブルによって急に広まったものではない。
むしろ、長年にわたって積み重なった評価や記憶が、そのまま定着してきたものだ。

実際、ニノイ・アキノ国際空港は、過去に複数の調査や比較記事で「世界で最も評価の低い空港」「ワースト空港の一つ」として取り上げられてきた。
ただし、これらの評価の中心は治安そのものではなく、施設の老朽化や動線の分かりにくさ、混雑、サービスの質といった運用面にあった。

一方で、治安や安全面に対する不安のイメージは、それ以前から空港にまとわりついていた。
象徴的なのが、1980年代に起きた政治的暗殺事件である。
国家の要職にあった人物が、到着直後の空港内で命を落としたという出来事は、マニラ空港そのものを「決して安全とは言い切れない場所」として国際的に印象づけた。

こうした歴史的な記憶に、のちの利用者体験や国際的な低評価が重なったことで、
T1は単に使い勝手の悪い空港というだけでなく、「何か起きてもおかしくない場所」というイメージまで含めて語られるようになった。
その印象は長く共有され、一度定着した後は、実態が変わっても更新されにくいものとして残り続けてきたのだと思う。

問題として表に出た出来事と、その影響

のちに、預け入れ荷物からの窃盗など、空港職員による不正が問題として表に出た時期があった。
これに加えて、入国や出国の過程で、賄賂や不透明な金銭の要求を受けたという体験談も少なからず共有されてきた。

これらは必ずしもすべてが公式に認定された事件というわけではない。
しかし、空港という最も制度化されているはずの場所で、
正規の手続きを踏んでいるにもかかわらず金銭を要求された、あるいは不正が疑われたという話が重なったことで不信感が強く残ることになった。

こうした出来事は、新たにT1の評判を悪くしたというより、
すでに存在していた不安や警戒心を裏づける形で受け止められた。
「やはり注意が必要な空港なのだ」という印象が強まり、
それ以前の体験談や噂と結びついて、T1のイメージは固定化されていった。

では、過去の評判を知ったうえで、いまT1を利用するとしたら、実際にはどう感じるのだろうか。

いまのT1を歩いて感じた率直な印象

入国審査前にある免税ショップ。深夜でも営業。
深夜でも営業の免税ショップ
到着フロアホール

では、現在のT1はどうなのか。
久しぶりに現地を歩いて感じたのは、「古さはあるが、荒れてはいない」ということだった。

NAIAターミナル1到着フロア出口のピックアップエリア

建物や動線には時代を感じるが、全体の雰囲気は落ち着いている。
かつて頻繁に見られた強引な客引きはほとんど姿を消し、声をかけられるとしても軽い確認程度である。周りを見れば警備員が目を光らせている。
かつて私の記憶に強く残っていた、金銭を要求されるトイレも、2025年現在で見た限りでは特に問題はなく、普通の空港設備という印象だった。

何より大きな変化は、Grabの存在である。

NAIAターミナル1到着ゲート付近にあるGrabのブース
ターミナル1のGrab案内ブース

料金や行き先が事前に明確になり、交渉や駆け引きをする必要がなくなったことで、到着後の心理的負担は大きく減っている。

それでもT1で意識しておきたいこと

一方で、T1はあくまで「通過するためのターミナル」であり、長居を前提とした場所ではない。
待機スペースは限られており、乗り継ぎや時間調整が必要な場合は、
NAIAターミナル間シャトルバスを利用してT3へ移動した方が明らかに快適である。
T3の設備や雰囲気については、NAIAターミナル3ガイドで詳しくまとめている。

また、T1の環境が以前より落ち着いたと感じられる一方で、
空港に関するトラブルや不正の話題が完全に過去のものになったわけではない。
その意味で、「改善された」という印象と、「油断してよい」という判断は、必ずしも同義ではない。

実際に利用する際は、案内や手続きは公式カウンターを基本とし、
空港を出る際の移動手段もGrabなど料金が事前に確認できる方法を選ぶだけで、不安要素はかなり減る。
ただし、空港を一歩出ればそこはマニラの街であり、
市内では現在も事件やトラブルが起きているため、空港内と同じ感覚で行動するのは避けた方がいい。

※マニラ市内の治安や、実際に注意すべきエリアについては、【マニラを歩いて検証した治安レポート】に整理している。

結論として、T1は「過去の評判だけで無条件に避けるべき空港」ではなくなっている。
ただし、快適さや安心感を過度に期待する場所でもない。
怖がりすぎず、しかし油断もしない――
その距離感で利用することが、今のT1と向き合ううえで最も現実的な判断だと思う。

本記事は、ニノイ・アキノ国際空港全体を整理したNAIA記事の一部として位置づけている。
ターミナル別ガイドや空港泊、シャトルバスなど、NAIAに関する全体像は【NAIA総合ガイド】にまとめている。

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