【ホーチミン・メトロ1号線】Bến Thành駅(ベンタイン駅)|市の中心に位置する始発・終着駅

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※本記事の内容は筆者が2025年10月に現地を訪れた際の取材をもとに構成しています。

ホーチミン・メトロ1号線の駅紹介シリーズもいよいよ最終回。第14回となる今回は、路線の終点にして始点となる「Bến Thành駅(ベンタイン駅)」を紹介する。
スオイティエン駅から始まったこのシリーズの締めくくりとして、最も象徴的な駅がこのベンタインである。市中心部のど真ん中に位置し、将来的には複数路線が交わる交通ハブとしてターミナル駅の役割を担う予定だ。

ベンタイン駅は地下2階建て構造となっており、地下2階がホーム、地下1階が改札とコンコース階にあたる。

ベンタイン駅の構内案内図(B2F~地上階までの立体構造)
地下2階がホーム階、地下1階がコンコース階という3層構造。

自動改札を通ると、まず目に入るのが開放感のある吹き抜け空間だ。天井の一部はガラス張りで自然光が地下まで届くよう設計されている。地下駅でありながら明るく、閉塞感の少ない印象を受ける。

改札付近の吹き抜けドームと券売機エリア
吹き抜けから光が差し込む明るい改札口。地下でも開放感がある。

ホームは島式構造で、両側に列車が停車する形式である。特徴的なのは、上りと下りのエスカレーターが並んで設けられている点で、ベンタイン駅のみしか見なかった構造だ。ホーム自体は他駅と大きく変わらない広さだが、コンコース階は非常に広く取られており、改札周辺の空間に余裕がある。

ベンタイン駅のホーム階全景(1号線終点)
開放的なホーム空間。2本の線路を挟んで両側に乗降ドアが並ぶ。
地下コンコースの待ち合わせスペース
広々とした空間にベンチが並び、多くの人が休憩や待ち合わせに利用。

地下1階は、Tran Hung DaoやLe Laiなど周囲の主要道路と地下でつながる構造になっており、将来的には「地下歩行ネットワーク」としての機能も果たすだろう。地上の交通量が多い交差点を安全に横断できるだけでなく、東南アジア特有のスコール(急な夕立)の際には、雨宿り場所としても重宝される。

さらにこの地下階には、将来的に商業スペースや駅連絡通路を整備する構想も進められている(参考:Future Southeast Asia)。
取材時点ではまだ店舗は設置されていなかったが、テナントスペースらしき区画が準備されており、今後の発展が期待できる。

ベンタイン駅には6つの出口が設けられているが、2025年10月時点で利用できるのは1・2・3・6番出口の4か所である。
4番・5番出口は現在閉鎖中で、地上部では大規模な建設工事が進んでいる(参考:Wikipedia – Bến Thành station)。現地で確認した限り、これらは大型複合施設「One Central Saigon」などの再開発エリアに隣接しており、完成までの間は利用停止の状態が続くようだ。
開放時期については正式な発表はなく、建物の竣工後に段階的に利用が開始されるとみられる。

ホーチミン中心部で建設が進む再開発プロジェクト「One Central Saigon」の外観。ベンタイン駅4・5番出口付近に位置する建設中の高層ビル
ベンタイン駅の地上部では、再開発プロジェクト「One Central Saigon」の建設が進行中。完成後は駅と直結する複合施設となる予定。
出口4の通路に設置された封鎖テープ(Calmette通り方面)
閉鎖中の4番出口。
閉鎖中の出口5(Tran Hung Dao通り方面)
5番出口。One Central Saigon完成後に利用可能になる見込み。

それぞれの出口の特徴は以下の通りである。

  • 1番出口:ベンタイン公園(9月23日公園)側。Pham Ngu Lao通りのバックパッカーエリアへアクセスしやすい。
公園側の出口1(ベンタイン駅地上入口)
駅のメイン出入口。ビテクスコタワーも望める好立地。
  • 2番出口:Le Lai通り側に出られるが、大通りを横断する必要があり、街中へ出るにはやや不便。
  • 3番出口:ベンタイン市場の真横に位置し、Le Thanh TonやLy Tu Trongなど繁華街方面へ直結。観光客には最も利用しやすい出口。
  • 6番出口:Ham Nghi通り側で、ビテクスコタワーやサイゴン川方面へのアクセスに便利。
雨上がりのベンタイン市場と駅案内板(6番出口)
6番出口から望むベンタイン市場

出口案内は黄色いサインで統一されており、ベトナム語と英語の併記でわかりやすい。開業初期にしては案内がしっかりしており、初めて訪れる旅行者でも迷いにくい印象である。

コンコース階は他駅に比べて格段に広く、中央にはベンチや自動販売機も設置されている。
地下鉄利用者だけでなく、待ち合わせやスコール中の雨宿りで立ち寄る人の姿も多い。特に夕方以降は、仕事帰りの若者や学生が多く、地下空間ながらも活気がある。

雨の中、駅構内で雨宿りする人々
夕立が多いホーチミンでは、駅構内が雨宿りスポットにもなる。

また、券売機周辺や改札口近くのドーム型吹き抜け部分は、メトロ1号線の象徴的なデザインのひとつで、天井の装飾照明とあいまってフォトスポットとしても人気が出そうだ。

開業直後の現在は、通勤・通学利用に加え、昼には観光客の姿も見られる。取材時は昼下がりで利用客は比較的少なく、静かで落ち着いた雰囲気だった。照明が明るく、地下でも圧迫感がなく快適に感じられた。改札機や表示板も整備されており、英語表記が充実しているため、外国人でも安心して利用できる。

地上に出ると、そこはホーチミン観光の中心地。駅名の由来となった「ベンタイン市場」が目の前に広がり、ローカルフードやお土産を求める観光客で賑わっている。

ベンタイン市場の正面外観

市場の周囲にはカフェやレストランも多く、観光途中の休憩にも便利だ。

徒歩10分ほどで、ホーチミン屈指の繁華街「Bùi Viện(ブイビエン)ウォーキングストリート」に到着する。

ブイビエン通りの夜景(ベンタイン駅から徒歩圏)
夜の観光や食事に人気の繁華街。駅から徒歩10分ほど。

ナイトライフの中心として知られ、外国人旅行者やローカルの若者が集まる人気エリアである。ベンタイン駅からメトロを利用すれば、遠方からでも気軽にアクセスできるようになった。

また、駅周辺には「Phuc Long Coffee」、「Highlands Coffee」などの人気チェーンカフェが点在しており、乗車前後のひと休みにもぴったり。9月23日公園を眺めながらコーヒーを楽しむのもおすすめだ。

地上部では現在、「One Central Saigon」を中心とした再開発が進められている。完成すれば、商業施設・ホテル・オフィスが一体化した複合都市空間が誕生する予定で、駅との直結動線が整備される予定である。

One Central Saigonの完成イメージ
One Central Saigon完成イメージ 出典:One Central Saigon公式サイト

これにより、Bến Thành駅は単なる地下鉄の始発駅ではなく、ホーチミン新都心の中心拠点としてさらに存在感を高めていくことだろう。

再開発プロジェクト「One Central Saigon」の詳細は公式サイト(ベトナム語)でも確認できる。

ベンタイン駅は、メトロ1号線の起点であると同時に、将来的な3号線・4号線・5号線との接続拠点として計画されている。
つまりここは、ホーチミンの地下鉄ネットワーク全体の“心臓部”ともいえる存在だ。
現在は1号線のみの運行だが、今後の延伸・新線開業により、市民の移動スタイルを大きく変える起点となるだろう。

スオイティエンから始まった1号線の旅は、このベンタイン駅でひと区切り。
開業により、市民や旅行者の移動手段が大きく変わりつつあるのを実感できた。
今後も路線延伸や再開発によって、このエリアの姿はさらに進化していくだろう。

ホーチミンメトロを実際に利用する方は、メトロ1号線の乗り方ガイドも参考にどうぞ。

参考リンク

→ 【前回】オペラハウス駅の記事はこちら

ホーチミン・メトロ1号線の全駅まとめはこちら

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