【現地取材】ホーチミン・メトロ1号線 High Tech Park駅(ハイテクパーク)周辺の今|駅紹介シリーズ③

ホーチミン・メトロ1号線High Tech Park駅のアイキャッチ画像。駅名標とシリーズタイトルを重ねたデザイン交通・移動
この記事は約5分で読めます。

※本記事の内容は筆者が2025年10月に現地を訪れた際の取材をもとに構成しています。

ホーチミン・メトロ1号線の駅紹介シリーズ第3回は「High Tech Park駅(Khu Công Nghệ Cao)」である。駅名の由来となっている「Khu Công Nghệ Cao」とはベトナム語で「ハイテクパーク」 を意味し、IT企業や研究開発拠点、外資系工場が集積するサイゴン・ハイテクパークのことを指す。

市内中心部から大きく離れた産業エリアに建設されており、ベンタイン駅からおよそ35分で到着する。

駅の構造は相対式で、プラットフォームは上部が吹き抜けになったバンコクBTSと似た造りである。構内にはトイレが設置され、全体的に清潔で新しい雰囲気が漂うのは、開業間もないホーチミン・メトロ全駅に共通する特徴だ。

High Tech Park駅の改札口とチケットカウンター、清潔で新しい駅構内
High Tech Park駅の相対式プラットフォームと停車中のホーチミン・メトロ列車

駅前に降り立つと、まず感じるのは「空間の広さ」である。大規模な工業団地に直結する駅ではあるが、駅前に工場が立ち並んでいるわけではなく、広大な空き地が広がっている。見渡す限り建物は少なく、目立つのは「One Hub Saigon」という近代的なビルのみ。

High Tech Park駅のプラットフォームから見えるOne Hub Saigonのオフィスビル
駅前に広がる草地。遠くにOne Hub Saigonのビルが見える

周辺にはまだ開発途中の区画も多く、静けさが際立つ印象。そのためか、駅を通勤に使う人は極めて少なく、利用者の多くはまだバイク通勤に頼っている。乗降人数も少なく、ちらほらとHUTECH大学の学生が利用しているのを見かける程度である。

High Tech Park駅周辺は典型的な産業エリアであり、大型トラックの交通量が目立つ。特にXa lộ Hà Nội(ハノイ大通り)へ抜ける交差点やバス停付近では、信号待ちの列に並ぶ大型車が次々と通り過ぎる。

High Tech Park駅近くのXa lộ Hà Nội交差点で信号待ちする大型トラック群
駅近くの通り。コンテナトラックが並ぶ

駅周辺には空き地や建設中の土地が多く、徒歩での散策には体力を要する。歩道は整備されているものの雑草が生い茂り歩きやすいとは言えず、歩く人影もほとんど見られない。観光客がのんびりと散歩を楽しむような場所ではなく、あくまで「産業を支える機能的な街」である。

High Tech Park駅周辺に広がる緑と雑草に囲まれた産業エリアの道路

駅前のXa lộ Hà Nội沿いには複数のバス停があり、スオイティエン公園や国立大学、Thu Duc中心部方面へも接続している。工場や大学への通勤・通学利用が多く、朝夕はバスの本数も比較的多い。メトロと組み合わせることで、郊外でも移動の選択肢が広がっている。

産業エリアを歩くと、圧倒的な存在感を放つ工場群に出会う。特に目立つのが日系大手の「Nidec」である。敷地面積は東京ドーム数個分という表現をしたくなるほど広大で、正門付近には厳重なセキュリティが敷かれている。

High Tech Parkエリアに立地する日系大手企業Nidecの巨大工場
日系企業Nidecの巨大工場。通勤時間帯にはバイクが出入りする

詳細はNidec Vietnam公式サイトでも確認できる。

駅から徒歩5分ほどの場所にあるのが「One Hub Saigon」である。ここには小規模ながら飲食エリアが整備されており、ベトナム料理や軽食、カフェなどが並んでいる。昼時にはオフィスワーカーや学生がランチを楽しむ姿も見られた。

High Tech Park駅近くのOne Hub Saigon入口の広場とヤシの木並木
整備されたOne Hub Saigonのエントランス広場
High Tech Park駅近くにあるOne Hub Saigonの飲食スペース、テーブルと開放的な屋根
One Hub Saigonの飲食スペース、テーブルと開放的な屋根
One Hub Saigon内にあるカフェ・ベトナム料理店「Seven Clubs」の看板とカウンター
麺料理やカフェを提供するSeven Clubsのカウンター

外観はおしゃれだが、実際にはシャッターが下りた店舗も多いのが残念。それでも周辺で働く人々の憩いの場として一定の利用があった。場所は以下地図参照。

High Tech Park駅の恩恵を最も受けているのは、おそらくHUTECH大学の学生たちである。駅から徒歩10分強の場所にThu Ducキャンパスがあり、制服姿の学生がメトロを利用する姿を目にする。

HUTECH大学のThu Ducキャンパス入口、30周年記念のカラフルな看板と校舎
カラフルな30周年記念ロゴが目を引くHUTECH大学キャンパス

キャンパス内にはカフェや食堂が充実している。ミニストップやPhúc Long(WIFIあり)が並び、学生たちの休憩や勉強の場となっている。

HUTECH大学キャンパスに並ぶミニストップ、Phúc Longの外観

さらに「Smart Canteen」では手頃な価格で食事ができる。

HUTECH大学キャンパスのスマートカフェテリア入口、学生が出入りする様子
学生たちで賑わうスマートカフェテリア
HUTECH大学キャンパスの学食に並ぶベトナム料理メニューサンプル
フォーやご飯物など多彩なメニューが並ぶHUTECH大学の学食

駅からのアクセスが良くなったことで、学生にとっては通学の選択肢が広がり、学外の人でも気軽に立ち寄れるスポットとなったように思う。

High Tech Park駅は、ホーチミン中心部から離れた産業エリアに立地しており、観光目的では訪れる機会が少ないかもしれない。しかしこの駅は、ベトナムの産業発展と教育の現場を支える重要な存在でもある。

駅の北側には日系企業を含む大規模工場群が広がり、南側のXa lộ Hà Nội(ハノイ大通り)沿いにはHUTECH大学のThu Ducキャンパスが位置する。駅から大学までは徒歩10分ほどで、幹線道路沿いを歩くルートになる。途中には産業エリアへ続く大きな交差点があり、トラックの往来が多いため、歩行時はやや注意が必要だ。

観光客にとっては見どころの少ないエリアだが、ハイテクパークや大学関係者、あるいは鉄道ファンにとっては一度訪れる価値がある駅といえる。工業地帯特有のスケール感と、発展途上の街並みを体感できるのがHigh Tech Park駅の魅力である。

なお、同じ1号線の隣駅「Thu Duc駅」や「Binh Thai駅」も、それぞれ異なる特徴を持っているため、併せて訪れると沿線の変化をより実感できるだろう。

関連リンク

ホーチミン市投資貿易促進センター(ITPC)の紹介ページ – サイゴン・ハイテクパークに関する概要情報
スオイティエン駅|ホーチミン・メトロ1号線の終点

国立大学駅|人気のスオイティエン公園、国立大学がある駅

タイトルとURLをコピーしました