※本記事の内容は2025年10月に現地取材した内容をもとに構成しています。
ホーチミン・メトロ1号線の駅紹介シリーズ第4回は「Thu Duc駅(Ga Thủ Đức)」。
ベンタイン駅からおよそ30分ほど北東に位置し、周辺にはローカル向けの住宅地が広がる。観光スポットは特に見当たらないが、大型コンドミニアムが建ち並び、郊外の生活拠点としての性格が強いエリアである。
もともとThu Ducはホーチミン市東部を代表する行政区であり、近年は住宅開発とともに再注目されている地域でもある。隣接するハイテクパークや大学エリアとともに、今後の都市発展を支えるエリアといえる。
Thu Duc駅の概要と雰囲気

駅は相対式ホーム構造で、高架上に設けられている。プラットフォームからはXa lộ Hà Nội(サーローハノイ通り)を見下ろすことができ、遠方には新しいコンドミニアム群が並ぶ。トイレは他の駅と同様に新しく、清潔感がある。朝と夕方の時間帯に訪れたが、乗客数はそこまで多くなく、主に通勤・通学の利用が中心と見られる。先の国立大学駅に比べると落ち着いた雰囲気である。

駅外観はコンクリートの無骨なデザインで、機能的かつシンプルな印象を受ける。エスカレーターやエレベーターも整備されており、アクセス面での利便性は高い。駅前は現在整備途上に見えるが、Metro Line 1の開通を受け、ホーチミン東部エリアの不動産市場では投資が活発化しつつあるとの報道もある。 (Vietnam News, 2024年12月)
同市は駅周辺を含む土地利用計画の見直しや「駅中心型開発(TOD)」の導入も検討しており、将来的に周辺環境がさらに整備されていく可能性がある。
住宅街とSaigon Gateway周辺の街並み

駅を出てまず目に入るのが「Saigon Gateway」と呼ばれる巨大コンドミニアムである。ホーチミン郊外の住宅開発を象徴する存在で、若い世帯やファミリー層が多く暮らしているようだ。周囲には観光施設やホテルはほとんど見当たらず、現時点では観光目的で訪れる場所ではない。ただし、生活の息づく街並みが広がっており、ローカルな空気を感じたい人にとっては興味深いエリアといえる。

駅周辺はXa lộ Hà Nộiに沿って住宅や店舗が連なり、交通量の多いエリアである。それに伴ってカフェの数も多く、通りを歩くと数軒のローカルカフェを見かける。その中から今回は「Café Song Hành」を紹介したい。
駅前のローカルカフェ「Café Song Hành」



「Café Song Hành」は駅直結の歩道橋を降りてすぐ、Xa lộ Hà Nội沿いにある。徒歩1分ほどで着く距離で、メトロの高架線を見上げながらコーヒーを飲むこともできる。交通量の多い道路に面していながら、オープンエアで風が抜ける心地よい空間だ。注文したのは「Mì xào」と「Trà đá」で、合わせて30,000ドン。麺は一般的なインスタントタイプだが、牛肉がしっかり入っており、ピリッと辛味のあるたれが食欲をそそる。素朴ながらも満足感の高い一品だった。
店内では地元客がゆったりとコーヒーを楽しんでおり、騒がしさとは無縁の穏やかな空気が流れていた。観光向けというより、地元の日常に溶け込むようなカフェである。
👉 グーグルマップで確認で場所を確認する。
再建された寺院「Chùa Giác Hạnh」

さらに周辺(駅の西側)を歩くと、鮮やかな黄色の外観が目を引く「Chùa Giác Hạnh」という寺院がある。
この寺院はThu Duc市のBình Thọ地区にあり、2022年に老朽化した本堂の再建工事が始まり、現在は新しい建物が完成している。
当時の再建開始はベトナム仏教協会の公式メディアでも報じられており、地域の信仰を支える存在として再整備された。(Giac Ngo Online, 2022年)
境内は広くはないが手入れが行き届いており、地元の人々が静かに祈りを捧げる姿が見られる。派手な観光寺院とは異なり、ベトナムの素朴な信仰文化を感じられる場所である。
👉 Googleマップで場所を確認する。
郊外に暮らしが息づくThu Duc駅

総じてThu Duc駅周辺は、現時点では観光客にとって特筆すべき要素は少ないが、生活インフラとして整備が進むエリアである。カフェや住宅が点在し、今後の発展余地を感じさせる。観光地としての魅力は限定的ながら、ホーチミン郊外のリアルな日常を観察できる場所といえるだろう。
次回は隣の「Binh Thai駅」を紹介する予定である。
→ 【前回】High Tech Park駅の記事はこちら
→ 【次回】Binh Thai駅の記事はこちら
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