早朝便でホーチミンから国内線に乗る予定の人にとって、
「ホテルを取るべきか、それとも空港で夜を明かすべきか」は悩ましい問題である。
特に2025年にオープンしたばかりの**タンソンニャット空港T3(国内線ターミナル)**は、情報がほとんど出回っていない。
「T3ってどこ?」「寝られるの?」「追い出されないの?」――そんな疑問を持つ人は少なくないはずだ。
なお、従来のT1・T2ターミナルでも夜間滞在は可能とされており、深夜便や早朝便に備えてベンチで休む旅行者の姿が見られる。
ただし施設の新しさや静けさという点では、今回のT3が最も快適に過ごせる環境といえる。
そこで今回は、実際にT3で空港泊を体験してきた。
リアルな深夜の雰囲気と、利用者目線での“泊まれるかどうか”をまとめてみた。

ピカピカの新ターミナル、ホーチミンの国内線新拠点
T3は2025年にオープンしたばかりの、ホーチミン・タンソンニャット空港の新しい国内線ターミナルで、ベトナム最大の国内線ターミナルだ。(出典:VnExpress(2025年4月報道))
利用するのは主にベトナム航空、バンブーエアウェイズ、ベトラベルなどの国内エアライン。
ターミナル1の混雑を緩和するために作られた新施設で、建物の中はどこを見ても新品そのもの。
白い大理石調の床にLEDの光が反射し、まるで新築ホテルのような雰囲気だ。

「ここで寝るなんてもったいない」と思うほどのピカピカ感だが、開業したばかりとあって飲食店や売店はまだ少ない。
つまり、空港泊するなら事前に飲み物や軽食を用意しておくのが鉄則である。
夜11時、到着。まだ人の気配あり
空港に着いたのは午後11時前。
この時間でもまだ到着便があり、2階のアライバルフロアは人の出入りがそこそこあった。タクシーの客引きも健在で、1階の到着口周辺はなかなかの活気。ターミナル間を結ぶ無料シャトルバスも0時過ぎまで走っている。
一方で、3階の出発フロアはというと――すでに静寂。最終便は23時発のハノイ行きで、チェックインカウンターもすべてクローズ。

煌々と照明は灯っているが、人影はまばらで、ピカピカの床に自分の足音だけが響く。
警備員の姿は見えるものの、「入っていいのかな…?」と少しためらうほどの静けさである。

夜のT3、営業店舗はほぼゼロ
1階にはレストランやカフェが並ぶが、22時を過ぎるとほぼ全滅。
「Cong Caphe」は22時閉店、「Trung Nguyen Legend」は22時半まで。どちらも空港泊勢とはすれ違いの生活リズムだ。

空港内にはレンタカーやハイヤーのカウンターも並ぶが、当然営業は終了している。

つまり、T3で夜を過ごすなら「買い物・飲食はほぼ不可能」と心得るべし。空港泊に備えて飲み物くらいは事前に確保しておきたいところ。
ベンチ発見、そして仲間を見つけて安心
時計を見るともう午前0時。到着階含めT3全体がすっかり“おやすみモード”に入っていた。
「これはもう完全に営業終了モードだな」と思いつつ、再び3階の出発階へ。
すると、いた。
ぽつぽつとベンチに横たわる“同業者”の姿。
人が少ない空間でこの発見は心強い。「あ、ここで寝ていいんだ」と無言の安心感を得る。

茶色の木製ベンチが長く設置されており、そこが今夜の宿。ベンチの数は多く、清潔で快適。清掃スタッフが黙々とモップをかける横で、空港泊組はスマホをいじったり、アイマスクを装着して眠りについたりしている。
筆者もその流れに便乗して、荷物を抱えて“チェックイン”である。
空港泊の環境チェック
ここで、実際に一晩過ごしてわかったT3の“快適度”をまとめてみたい。
| 項目 | 状況 |
|---|---|
| ベンチ | 木製で寝転べる。数は多い。 |
| 照明 | 明るい。アイマスクがあると快適。 |
| 空調 | 24時間稼働。やや冷え気味。 |
| トイレ | 新しく清潔。高級ホテルレベル。 |
| Wi-Fi | 無料で利用可能。速度も安定。 |
| 電源 | 壁際にあり。深夜でも普通に使える。 |
| 治安 | 警備員巡回あり。特に不安なし。 |


明るい、快適、でも眠れない(かも)
照明は夜通し点灯しており、明るさはコンビニレベル。
安全面では申し分ないが、寝るには少々明るすぎる。慣れた旅人たちはアイマスク持参。筆者はというと、手ぬぐいを目にのせて対応した(地味に効果あり)。
空調は24時間稼働しており、少し肌寒い。長袖か羽織りものは必須だ。
Wi-Fiも繋がり、トイレはまるで高級ホテルのようなピカピカ仕様。
さらに電源も壁際にしっかり用意されており、スマホの充電も問題なし。
“空港泊三種の神器”(Wi-Fi・トイレ・電源)はすべて完備されていた。
午前4時、空港が再び目を覚ます

目を覚ますと、すでに人の気配。時計を見ると午前4時過ぎ。
空港のモニターには、4:55発ハノイ行きの文字が点灯していた。
チェックインカウンターにスタッフが戻り、静寂の空間が少しずつ動き出す。
T3の朝は早い。気づけば空港泊組もそれぞれ荷物をまとめ、旅立ちの準備を始めていた。
空港泊は可能、ただし快適とは限らない
結論からいえば、タンソンニャット空港T3での空港泊は可能である。
追い出されることもなく、治安的にも特に問題は感じなかった。
国内線ターミナルということで宿泊者は主にベトナム人が中心だが、外国人の姿もちらほら見かけた。
ただし、眠りの質は保証できない。
明るさ、硬いベンチ、そして適度な冷気。
翌朝には「体がバキバキである」というのも定番の結末だ。
それでも空港泊には“利点”がある
早朝5時発の便に乗る場合、ホテルに泊まっても結局深夜3時起き。
「寝坊が怖くて結局あまり寝られなかった」なんてこともよくある話だ。
それを思えば、空港で過ごしてしまう方がむしろ安心である。
移動も不要で、チェックイン開始をそのまま待てる。
つまり、T3の空港泊は「安く・安心に・確実に」早朝便を乗りたい人向けの現実的な選択肢である。
快適さを求める人にはおすすめできないが、節約派には十分アリだ。
まとめ:ピカピカの新空港、寝心地はそこそこ
タンソンニャット空港T3は、とにかく新しく清潔。
夜間の店舗営業はないが、ベンチ・電源・Wi-Fiが揃い、静かに過ごすには十分。
スワンナプームやチャンギのような“24時間都市型空港”とは違うが、
“静かに眠れるミニマル空港”としての魅力がある。

節約派・早朝便派の旅人にとって、T3の空港泊はなかなか悪くない選択肢である。
(翌朝の体の痛みを除けば、の話だが。)


