※本記事は2025年11月時点の現地取材に基づいています。
ハノイ西部、学生の多いXuân Thuỷ(スアン・トゥイ)通り沿いに位置するのが、ハノイメトロ3号線のNational University(国家大学)駅である。
(日本語では「国立大学駅」と呼ばれることもありますが、正式には ハノイ国家大学(Vietnam National University) を指すため、本記事では「国家大学駅」で統一しています。)
その名の通り、駅の目の前にはハノイ国家大学(Vietnam National University, Hanoi / VNU)のキャンパスが広がり、朝夕には学生たちの往来で賑わう。すぐそばにはショッピングモール「Indochina Plaza Hanoi(IPH)」があり、日本食店やカフェも多く、勉強と暮らしが近くにある街として発展している。

※本記事はハノイ在住6年の筆者が現地を歩いて確認した一次情報をもとに構成しています。券売機やIC決済などの共通事項は本シリーズでは省略し、駅の個性と周辺の空気感を中心に紹介します。
駅の概要|学生街の玄関口
National University(国家大学)駅は、その名のとおりハノイ国家大学の正面に位置する。朝夕の授業前後には学生が一斉に動き出し、駅下を走るXuan Thuy通りはバスやバイクで混雑する。メトロ開通により、今後は渋滞緩和が期待されている。
大学の反対側には大型複合施設Indochina Plaza Hanoi(IPH)がそびえ、商業施設とオフィス、高層コンドミニアムが一体化した複合エリアを形成。学生の街でありながら、日系企業のオフィスや駐在員の住まいも多く、生活の利便性と若者の活気が同居しているのが印象的だ。
駅構造と雰囲気|赤茶色の柱が印象的

駅構造は他の高架駅と同様に、3階部分がプラットホームである。コンコースからエスカレーターを上がると、赤茶色の柱が並び、柔らかい色調で統一されている。屋根のクリアパネルから自然光が差し込み、昼間は明るく開放的。

電車の運行は時間どおりで安定しているが、現時点では1路線しか開通していないため、利用者はまだ限られている。バイクやバスに比べると空いており、ピーク時でもゆったりとした乗車ができる。
出口ごとの表情|大学と都市が向かい合う

大学側の出口を出ると、すぐにキャンパスの門が見える。

授業の時間帯には学生が一斉に流れ込み、駅前は人であふれる。屋台や書店、コピーショップなど学生向けの小さな店舗が並び、生活のリズムがこの通りだけで感じ取れる。
一方、反対側のIPH側出口に出ると、雰囲気は一変する。

ガラス張りの商業棟の中にレストラン、カフェ、ドラッグストア、フィットネスジムなどが並び、雨の日でも建物内で一通りの用事を済ませられる。駅から徒歩数分の範囲で生活が完結する利便性は、このエリアならではである。


学びと国際性|語学の名門と留学生の街
ハノイ国家大学には外国語学部があり、その中に日本語学部も設置されている。日本の大学との交換留学制度も整っており、在学中に日本に渡る学生も多い。国家大学ということもあり、学生の学習意欲は高く、現地で優秀な日本語人材を探すと、ハノイ国立大学出身者に行き着くことがしばしばある。
また、この大学は外国人向けのベトナム語コースでも知られ、英語でベトナム語を学ぶ留学生が多い。キャンパスでは多言語が飛び交い、外国人学生とベトナム人学生が同じカフェで勉強する姿も見られる。
“National University”という駅名は、まさに学びと国際交流の拠点を象徴している。
学生街の素顔|Nha Xanh市場と屋台の賑わい

駅から少し歩くと、学生の生活圏がそのまま広がっている。中でも有名なのが「Nha Xanh市場(グーグルマップ)」だ。細い通りの両側に衣類や靴、アクセサリーなどが所狭しと並び、夕方になると若者で歩くのもやっとの賑わいになる。


価格は安く、掘り出し物も多いが、品質にばらつきがあるため注意が必要である。筆者も以前、30万ドンほどの靴を購入したが、数日で壊れてしまった経験がある。
路地を進むと学生向けのカフェや軽食屋台も多く、どこか懐かしい雰囲気が漂う。朝は通学途中の学生で賑わい、夜は友人同士で集う姿が目立つ。時間帯によって街の空気が変わるのもこのエリアの魅力だ。
暮らしと利便性|日本ブランドも揃う街
学生街でありながら、生活利便性も非常に高い。IPHには日本食レストランやマツモトキヨシ、無印良品、日本食材店「スーパー富分」が入り、少し歩けばAEON Xuan Thuy店もある。日常の買い物から休日の外食まで徒歩圏で済ませられるのが特徴だ。
Rubik360をはじめとする新しい高層コンドミニアムも増えており、学生、社会人、外国人が混在する「住む街」としての顔も持つ。
メトロの使い方|まだ補助的な移動手段

Xuan Thuy通りは常に交通量が多く、バイクやバスでは時間が読みにくい。メトロは時間どおりに走る点で安心感があるが、現状では開業区間が限られているため、移動範囲はまだ狭い。
駅前には複数のバス停があり、メトロと組み合わせれば移動の幅は広がる。
ただし渋滞時はバスも遅れがちで、短距離ならバイクタクシーの方が早いこともある。

現段階では、メトロは“主要な移動手段”というよりも、雨天時や混雑回避に使いやすい“補助的な選択肢”といえる。
ハノイメトロの公式サイト(https://metrohanoi.vn/)では、路線概要などの基本情報を確認できるが、時刻や運行案内は未掲載である。最新の運行状況は駅構内掲示を参考にすると確実だ。
今後、地下区間(Cau Giay〜Hanoi駅)が開通すれば、都心と郊外を結ぶ実用的な交通手段としての価値は大きく変わるだろう。
夜の雰囲気と治安
夕方以降も学生が多く、人通りは途絶えない。屋台が並ぶ通りでは夜遅くまで営業する店も多く、全体的に明るく安全な印象だ。照明も整備されており、女性の一人歩きでも大きな不安は感じにくい。ただし、裏路地に入りすぎると暗い場所もあるため、主要通り沿いを歩く方が安心だ。
今後の発展と比較|学生街から住宅街へ
駅周辺では新しいサービスアパートやコンドミニアムの建設が続き、地価も上昇傾向にある。大学を中心とした学生の街から、徐々に「暮らす街」へと変化しつつある印象だ。メトロの延伸が進めば、Le Duc Tho駅以西と合わせて今後さらに居住ニーズが高まることが予想される。
同じ「国家大学駅」でも、ホーチミンメトロ1号線のNational University駅とは印象が異なる。ホーチミン側が郊外の広いキャンパス群に囲まれた静かな環境であるのに対し、ハノイのNational University駅は都市の中心に近く、学生街と商業施設が隣り合う“街の中の大学駅”である。実際に両方を訪れると、ハノイの方が学びと暮らしが密接に重なっていると感じられる。
まとめ|学びと暮らしが近くにある街
National University駅は、大学と街がほどよく混じり合う場所である。学生の生活感と都市の利便が自然に共存し、徒歩圏で生活のすべてが完結する。
現状ではハノイメトロ3号線が1路線のみのため、通勤・通学の主な交通手段としてはまだ限定的だが、時間どおりに走る安心感がある。将来的に地下区間が開通すれば、都市生活の中心にさらに近づく駅となるだろう。
勉強する学生、留学生、周辺で働く人々にとって、この駅は「学び」と「暮らし」が隣り合う、そんな親しみやすい拠点である。
▶ ハノイメトロ3号線 全駅ガイド一覧もあわせてご覧ください。
▶ 前の駅:Minh Khai〜Le Duc Thoの郊外区間を歩く
▶ 次の駅:Chua Ha駅ガイド


