※本記事は2025年11月時点の現地取材に基づいています。
ハノイメトロ3号線の地下区間の中でも、交通量が極めて多い交差点に位置し、開業に向けた工事の影響が強く現れている駅がカットリン(Cát Linh)駅予定地だ。位置としてはキンマー(Kim Mã)駅とバンミュウ(Văn Miếu)駅の中間にあたり、3号線の中心部の工事区間に含まれている。この地下区間は2027年の完成・開業を目指して建設が進められており、ハノイの都市鉄道計画を語る上で欠かせないエリアである。

カットリン駅周辺の工事状況とカットリン通りの渋滞
カットリン周辺は工事規模が大きく、ハノイメトロ3号線の最新の工事状況を知る上でも注目されるポイントだ。
カットリン駅周辺では、カットリン通りの両側に長いフェンスが設置され、道路中央を大きく掘削する工事が続いている。

工事フェンスは車道ギリギリまで迫り、実質的に車線が圧縮されている状態で、交通量の多さに対して明らかに道路幅が足りない。この先がGiang Voを含む複雑な交差点にあたるため、信号待ちの車列が伸び、朝夕の時間帯は小さな渋滞が頻発している。
フェンスは駅周辺だけでなく前後の区間まで続き、区間全体が“連続工事”の様相を呈している。一方、歩行者用の通路も確保されているが、幅が狭くすれ違いも困難なほどで、特に夕方は通勤客で混雑する。バイクとの距離も近く、歩く際は注意が必要だ。

カットリン地下駅の建設状況(開削式工事)
現場では道路中央を大きく掘り下げる開削式(Cut & Cover)で地下駅の建設が進んでいた。

いわゆる“地面を掘って箱型の駅を作る方法”で、地上からでも深い基礎部分が確認できる。周囲には仮設の換気ダクトや排水ホース、電源ケーブルが多数並び、地下空間の整備が本格化している様子がうかがえる。
この区間は建物密度が高く交通量も多いため、中心市街地特有の難易度の高い工事が進んでいる印象である。フェンスの案内板には「CP03」「S10」といった工区番号が掲示されており、工事を区間ごとに細かく分けて進めていることが分かる。

現地に来ないと気づかないこうした情報からも、中心部での地下鉄工事の複雑さが伝わってくる。
その一方で、工事フェンスは長く続いており、工事の進捗によって街の雰囲気が変わりやすい区間でもある。進捗に応じてフェンスの位置や歩道の幅が変わるため、街の側からも工事の段階が感じ取れる場所だ。
Giang Vo通りと周辺バス・BRTとの接続
カットリン駅が他の地下区間と比べても特徴的なのは、交通量の多い Giang Vo(Giảng Võ)通りのすぐ近くを貫いている点である。この通りはハノイ中心部でも屈指の交通結節点で、バイク、車、バスが絶えず行き交う。
周辺には以下の交通施設が集中している:
- BRT「Nui Truc」駅(徒歩すぐ)
- 90番バス(空港アクセスに便利)の始発・終点
- キンマーバスターミナル(市内各地へアクセス可能)
特に90番バスはノイバイ空港へ向かう際に使い勝手が良く、現地住民には日常的な移動手段として定着している。慣れていないと観光利用としては難しいが、ローカルエリアとの結節点としての役割は大きい。
3号線カットリン駅が開業すると、これらの交通手段と鉄道が結合し、地上・地下を含めた“複合ハブ”として機能する可能性が高い。
こうした地上交通の密度に対して、鉄道どうしの乗り換え計画がどのように整備されるのかは、利用者にとって重要なポイントとなる。
3号線カットリン駅と2A号線の乗り換え計画
ハノイメトロ2A号線(Cát Linh–Hà Đông線)は既に開業しており、生活圏と中心部を結ぶ重要路線となっている。

一方でホーチミン市も含め、ベトナムの都市鉄道はまだ路線数が少なく、路線間接続が存在しないのが現状である。
そのため、カットリン駅は国内で初めて“都市鉄道どうしの乗り換えが可能となる駅”となる予定であり、ハノイの都市交通において象徴的な存在になりつつある。カットリン駅での乗り換え計画は、ハノイメトロを利用する旅行者や在住者にとって大きな関心事であり、「カットリン駅 乗り換え」といった関連ワードでも注目が集まりつつある。
両カットリン駅間の距離と巨大交差点という課題
現地で特に気になったのは、地下の3号線カットリン駅と、高架の2A号線カットリン駅がどのように接続されるのかという点だ。両駅は隣り合っているわけではなく、Giang Vo、Cat Linh、Hao Nam、Giang Van Minh の複数の通りが交わる複雑な交差点を挟んで位置している。現在の状況のままでは横断歩道を使って移動するしかなく、信号待ちも多いため、地上動線のみでの乗り換えは現実的ではないと感じた。
こうした状況を踏まえ、ハノイ市交通局が2A号線と3号線を結ぶ地下連絡通路(歩行者トンネル)の建設案を準備しているという報道がある。内容としては、2A号線カットリン駅の高架階から階段・エスカレーターで地上/地下へ降り、3号線側の乗換レベルへ接続するという計画で、投資額は約1,130億ドン規模とされている(Hanoi Times報道)。1,130億ドン(約6.5億円)の地下連絡通路計画は、駅単体の追加工事としては比較的コンパクトな投資で、実現性は決して低くない。ただし、現時点でこの案が最終決定し、施工発注されたという公式情報は見つからず、「乗り換え方法は検討中」という段階にあると見られる。
いずれにせよ、カットリン駅が国内初の都市鉄道路線どうしの乗り換え駅になることは間違いなく、利用者の移動時間を大きく左右するため、最終的な接続方式は注目点となる。現地の交通事情を考えると、地上横断よりも、地下連絡通路または高架歩道橋の整備が実質的な前提になると感じられた。
まとめ:カットリン駅開業後に期待できる利便性
カットリン駅は、
- 交通量が多い交差点に位置する地下駅
- 地上交通(BRT・バス)との結節点
- 国内初の都市鉄道乗り換え駅となる予定
- 複雑な都市部での地下工事が進行中
という特徴を持つ、3号線の中でも注目度の高い駅である。
工事の影響で現在は道路の混雑が続いているが、3号線が開業し2A号線との接続が実現すれば、このエリアの交通は大きく改善されるだろう。
都市交通が徐々に形を成していく過程を、最も身近に感じられる場所の一つである。
工事中の地下区間の起点となる ハノイ駅工事レポートはこちら。
ハノイメトロ3号線の全体概要については、3号線まとめガイドで詳しく紹介しています。

