【ホーチミン・メトロ1号線】オペラハウス駅(Nhà Hát Thành Phố)|市の中心にあるユニーク構造の地下駅

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※本記事の内容は筆者が2025年10月に現地を訪れた際の取材をもとに構成しています。

ホーチミン・メトロ1号線の第13回は、観光の中心地に位置する「オペラハウス駅(Nhà Hát Thành Phố / Opera House Station)」を紹介する。
始発のベンタイン駅からわずか1駅。市の中心にありながらコンパクトにまとまった地下駅で、観光客や通勤客の利用も多い。
5つの出口があり、それぞれがグエンフエ通りやドンコイ通り、高島屋など主要エリアに近い。
メトロ開業によって、これまで車や徒歩でしか移動できなかった中心街が、少しずつ“地下でつながる街”になりつつある。

オペラハウス駅Ben Thanh方面ホーム
Ben Thanh方面のホーム
オペラハウス駅 Ba Son方面のホーム
Ba Son方面のホーム

オペラハウス駅の特徴は、なんといってもそのホーム構造だ。
駅の構造では珍しく「単式ホーム1面1線×2層構造」という設計になっている。上り線と下り線がそれぞれ別の階にあり、乗る方向によってホームのフロアが異なる。日本でいえば、東急田園都市線の桜新町駅のように、上りと下りが別階に分かれた構造だ。

この構造やデザインの詳細はTuoi Tre Newsの記事でも紹介されている。

オペラハウス駅 構内階層図
駅構内マップ。上り線と下り線で階層が分かれている。

なぜこの構造になったのかは公式には明らかではないが、おそらく中心部という限られた地下空間を有効活用するための設計だろう。すぐ近くにはオペラハウス(ホーチミン歌劇場)や広場があり、構造上も大きく広げにくいエリアに位置している。島式ホームに比べるとやや非効率にも見えるが、この駅だけのユニークな構造と考えると、鉄道ファンにはたまらないポイントだ。
観光地が集まる駅だが、普通の人が注目するのは地上の風景だろう。そんな中でこの地下構造にわくわくしていたのは、きっと自分くらいだと思う。

オペラハウス駅のホーム内階層移動のためのエスカレーター
各階ホームへの移動はエスカレーター、エレベーターを利用できる。
オペラハウス駅 改札階
改札階の様子。清潔で明るい雰囲気が印象的。

出口は全部で5か所あり、それぞれが市内主要スポットに直結している。

  • 1番出口:グエンフエ通りに面しており、地上に出るとすぐにホーチミン像と人民委員会庁舎(市庁舎)が目に入る。
     ただし上りエスカレーターのみで、ここから駅に入ることはできない。なぜこのような設計なのか、少し不思議に思う。
地上への片道導線のエスカレーター
ホーチミン人民委員会庁舎とホーチミン像
1番出口を出ると、人民委員会庁舎とホーチミン像が見える。
  • 2番出口:Lê Lợi通り側にあり、Pasteur通り方面へのアクセスに便利。
  • 3番出口:2番のLê Lợi通りの向かい側で、地上に出て少し歩くと高島屋が入るSaigon Centre(サイゴンセンター)に到着する。地下直結ではないが距離は近く、ショッピング目的ならこの出口が最も便利だ。
駅案内看板とサイゴンセンター
3番出口を出て少し歩くと高島屋の入るサイゴンセンター。
  • 4番出口:オペラハウスのすぐ手前に位置し、Union Square(ユニオンスクエア)やドンコイ通り方面へ向かう際はこちら。日本人街のレタントン通り、大聖堂、中央郵便局などへも徒歩圏内だ。
オペラハウス駅 4番出口付近
4番出口を出るとすぐオペラハウス前の広場に出る。
  • 5番出口:4番の向かい側で、ドンコイ通りに出る。周囲には高級ホテルやブランドショップが並び、ホーチミン観光の中心エリアといえる。

それぞれの出口が主要観光地をカバーしており、どの方面へも徒歩でアクセスできる。出口マップを確認しながら歩けば、地上に出た瞬間から観光が始まるような感覚だ。

地下の通路を歩いていると、どこか日本の駅を思わせる。
壁面や照明、誘導ブロックの配置など、日系企業が多く関わっていることを感じさせる設計だ。

オペラハウス駅 地下通路 「8番出口」を思わせる風景

整然とした雰囲気は、まるで日本の地下鉄構内にいるような感覚で、ゲームや映画で話題になった「8番出口」の世界を連想させる。
海外の地下鉄特有の雑多さがなく、ホーチミンとは思えないほど落ち着いた空間だ。

Union Square 地上階入口
4番出口とつながるUnion Square地上階出入口。
Union Squareと地下鉄の出口案内。地下通路で直結している。
地下で直結する4番出口とUnion Square。

オペラハウス駅のもうひとつの特徴は、Union Squareとの地下接続がある点だ。
4番出口付近からそのまま地下フロアに入り、ショッピングモール内へ移動できる。
ホーチミン・メトロ1号線の駅で商業施設と直結しているのは、現時点ではここだけ。
地下の動線がうまく設計されており、駅から外に出ずにそのまま買い物やカフェ利用ができる。
都会の地下らしい利便性を感じる構造だ。

CAFE U 外観
Union Square地下にあるおしゃれなカフェ「CAFE U」。

Union Squareの地下フロアには、メトロ構内と直結したおしゃれなカフェ「CAFE U」がある。
駅から4番出口方面に進むと自然にたどり着く位置で、天井がやや低く落ち着いた雰囲気。店内は広く、緑を取り入れたインテリアが印象的だ。

CAFE U 店内
店内は明るく広々。

カフェラテ(80,000ドン)を注文してみたところ、香りもよく、程よい苦味でバランスの取れた味。
PC作業をしているビジネスパーソンの姿もあり、静かに仕事や休憩ができる空間として利用価値が高い。地図はこちら(グーグルマップ)

Union Square スターバックス
同じ地下フロアにあるスターバックス店舗。

同じフロアにはスターバックスも並んでおり、朝の通勤前や観光途中に気軽に立ち寄れる。
「メトロに直結したカフェでコーヒーを飲む」——これまでのホーチミンでは考えにくかった体験が、ここでは日常の光景になりつつある。

ホーチミン市民劇場(オペラハウス)外観
地上に出ると目の前に現れるオペラハウス。

地上に出ると、すぐ目の前にはオペラハウス(市民劇場)がそびえ立つ。
周囲にはホーチミン像の立つグエンフエ通りやサイゴンセンター、高島屋などが並び、ショッピングやカフェもすぐ楽しめる。
駅周辺の街並みの様子は、こちらのフォトレポート(STEP JOBS) でも詳しく紹介されている。

グエンフエ通りからみたホーチミン人民委員会庁舎
高島屋内にあるお土産の販売店
高島屋には日本語案内のあるお土産販売店がある

少し足を延ばすと、サイゴン中央郵便局(グーグルマップ)や聖母マリア教会(現在修復中)(グーグルマップ)といった定番観光スポットにも歩いて行ける。教会は2017年から修復が続いており、外壁のほとんどが足場とシートで覆われているため、赤レンガの姿は今は一部見えない。それでも広場一帯には観光客が多く、ホーチミン中心部を象徴する場所として変わらず人気だ。

サイゴン中央郵便局 外観
観光客で賑わうサイゴン中央郵便局
聖母マリア教会(サイゴン大教会)修復中の様子
聖母マリア教会(サイゴン大教会)は修復中

ベンタイン駅からわずか1駅。観光ルートの中心に位置するこの駅を拠点にすれば、短時間でも効率よく街歩きを楽しめる。

夕暮れのグエンフエ通り
夕暮れ時のグエンフエ通り

オペラハウス駅は、ホーチミン・メトロ1号線の中でもっとも“市の顔”に近い場所にある駅だ。
単式ホームの2層構造や、商業施設と地下でつながる造りなど、限られた空間を工夫して設計された点が印象的である。
まだ開業したばかりのため規模は小さいが、街の中心に静かに息づく“地下の新しい入口”のような存在だ。

地上ではオペラハウスや人民委員会庁舎といった歴史的建物が並び、地下では近代的なメトロが走る。
古い街並みと新しい交通が交差するこの感覚こそが、オペラハウス駅の魅力だと思う。

観光の途中にふと立ち寄り、地上と地下の“今とこれから”を歩いてみる――そんな楽しみ方ができる駅である。

次回はホーチミンメトロ1号線終点の「Ben Thanh駅」を紹介します。
→ 【前回】Ba Son駅の記事はこちら
→ 【次回】Ben Thanh駅の記事はこちら(予定)

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