ホーチミン・メトロ1号線の最北端に位置する「スオイティエン駅(Suoi Tien Terminal Station)」。
ベンタイン駅から終点まで約40分で到着し、駅前には新しい「新東部バスターミナル(Bến xe Miền Đông Mới)」が直結している。観光スポットに直結する駅ではないが、長距離バス利用の拠点や鉄道ファンの訪問先として注目されている。
ホーチミン・メトロ1号線の終点「スオイティエン駅」と延伸計画
スオイティエン駅(Ga Bến Xe Suối Tiên / Suoi Tien Terminal Station)は、ホーチミン都市鉄道1号線の北側終点駅である。ベンタイン駅から13駅目に位置し、高架構造の島式ホームを採用している。

現在はここが終点であるが、将来的にはさらに北方向へ延伸する計画案が存在する。ドンナイ省やビンズオン省方面へ路線を延ばす構想が報じられており、地域間を結ぶ交通の中枢として期待されている。ただし現時点ではあくまで検討・計画段階であり、具体的な着工時期やルートは確定していない。
(Tuoi Tre News, 2025/03/04:ドンナイ延伸案/Tuoi Tre News, 2024/09/20:ビンズオン接続案)。

ベンタイン駅からの所要時間は約40分前後、運賃は片道15,000〜20,000VND程度である。メトロの運行本数はラッシュ時に5〜10分間隔、日中は10〜15分間隔が目安で、終点までのアクセスは安定している。
駅構内の様子(改札階・トイレ)
改札階には清潔で新しいトイレが整備されており、利用しやすい環境である。

ベトナム国旗が運動会のように連なって飾られていたのが印象的で、日本の駅と異なり広告はほとんど見られなかった。

出口1は空き地、出口2は新東部バスターミナル直結
出口は2か所に分かれている。
- Exit 1:駅前には特に施設はなく、広々とした空き地と道路(国道AH17)が広がっている。バス停留所がある程度で、周囲はまだ開発前といった印象である。
- Exit 2:大きなバスターミナル「新東部バスターミナル(Bến xe Miền Đông Mới)」が駅の目の前にあり、屋根付き通路で直結している。現状ではこのターミナルがスオイティエン駅を利用する際の主な目的地となる。

スオイティエン駅直結「新東部バスターミナル」の施設と現状
スオイティエン駅前にあるのが 新東部バスターミナル(Bến xe Miền Đông Mới) である。建物は新しく、広い待合ロビーや切符売り場、フードコートが整備され、すでにブンタウ・ダラット・カントー・ムイネーといった主要都市への長距離路線が発着している。利用は可能であり、旅行者にとっては地方都市へ移動する際の重要な拠点となる。
フードコート・カフェ・ATM
バスターミナル内にはカフェや軽食店がいくつかあり、バインミー(約25,000VND)やベトナムコーヒー(約20,000VND)を手軽に楽しむことができる。フードコートの雰囲気はあくまで乗車前後の食事や休憩所という位置づけで、ノマド作業には向かない。

ATM(Vietcombank)も設置されており、出発前の現金引き出しに便利である。ただし両替所は見当たらず、市内で事前に両替を済ませておくのが望ましい。

長距離バスの主要所要時間
新ターミナルからは南部・中部の主要都市へバスが出ており、目安の所要時間は以下の通りである。
- ブンタウ:約2時間
- ファンティエット:約4時間
- ダラット:約6〜7時間
- カントー:約3〜4時間
- ムイネー:約5時間

新バスターミナルの課題
一方で、ターミナルの稼働状況には課題もある。報道や現地の印象からも、設計規模に対して利用者はまだ少なく、実際に訪れると「空いている」印象を受けやすい。
- 稼働率は低め:229路線のうち新ターミナルに移転したのは約60路線にとどまっている。
(Phụ nữ Online, 2024/09/07) - 旧ターミナルも稼働中:Bến xe Miền Đông cũ(旧ミエンドン・バスターミナル)は依然として多くの路線を抱えており、利用者も多い。
- アクセスの不便さ:市中心部から約20km離れており、旧ターミナルに比べると距離があるため利用者に敬遠される傾向がある。ただし、メトロ1号線の開業によりベンタイン駅から乗り換えなしで到達できるようになり、以前よりアクセスは大きく改善された。
現時点では「営業はしているが本格稼働とは言い難い」状態であり、今後の完全移行と都市開発によって真価を発揮することが期待される。

空港から市内へ向かうバスの利用については、別記事『タンソンニャット空港から市内中心部への移動方法』で詳しく紹介している。
観光拠点ではなく長距離移動の結節点としての価値
スオイティエン駅という名前から、近隣の「スオイティエン公園(Suoi Tien Theme Park)」の最寄り駅だと誤解されやすい。しかし、実際に公園へアクセスするならひとつ手前の「国立大学駅(Ga Đại học Quốc gia)」が便利であり、この駅から徒歩で行ける距離ではない。観光目的でこの駅に降りるメリットは少ない点に注意が必要である。
一方で、この駅の最大の価値は「新東部バスターミナル(Bến xe Miền Đông Mới)」に直結していることである。ここからはブンタウ、ダラット、ムイネー、カントーといった南部・中部の主要都市に長距離バスが運行しており、市内中心部からメトロで移動し、そのまま地方都市へ乗り継ぐことができる。長距離移動を予定する旅行者にとっては、効率的で快適なトランジット拠点となる。
開発途上で生活利便性は限定的なエリア
スオイティエン駅周辺は、広い道路と空き地が大部分を占めており、住宅や商業施設はまだ限られている。ベトナム人の生活圏として一定の利用はあるものの、駅前に暮らす利便性は高くなく、外国人が住むエリアとしても現状では発展途上である。

現時点では「生活の利便性」というよりも、長距離バスへのアクセス拠点としての役割が大きい。今後の都市開発や再開発が進めば、生活拠点としての可能性が広がると考えられるが、少なくとも旅行者や外国人居住者にとっては目的地となる場所ではない。
スオイティエン駅は終点駅+新バスターミナルの結節点、今後の発展に期待
スオイティエン駅は、ホーチミン・メトロ1号線の北端を象徴する終点駅であり、実質的には「鉄道と長距離バスを結ぶ結節点」としての機能を果たしている。新東部バスターミナル(Bến xe Miền Đông Mới)はすでに稼働しているものの、多くの路線は旧ターミナル(Bến xe Miền Đông cũ)に残っており、移行はまだ途上である。観光拠点としての利用価値は低いが、都市と地方を結ぶ玄関口として将来的な発展が期待される駅である。
