ウタパオ空港は、パタヤに入るための空港である。
一般的に想像される「便利な国際空港」とは性格が大きく異なり、発着便は少なく、空港内の施設も最低限にとどまる。スワンナプーム空港のような規模や利便性を期待して訪れると、肩透かしを食らうだろう。
しかし、現地を実際に行って分かったのは、これは欠点ではなく設計思想の違いだという点である。ウタパオ空港は、空港で時間を過ごす場所ではなく、到着後すぐに送迎・移動へ流すことを前提とした空港であり、その役割は一貫してパタヤ向きに最適化されている。ターミナルの構造、案内表示、交通手段、利用客層を見ても、個人旅行者が空港内を回遊することは想定されていない。団体客やリゾート送迎を効率よく処理するための、小さく割り切った空港という位置づけだ。
本記事では、現地で確認した実情をもとに、ウタパオ空港の実態、パタヤ利用における使いどころ、そして向いている人・向かない人を率直に整理する。
パタヤ市内への移動や交通関連情報は、パタヤ交通ガイドで整理している。
ウタパオ空港はどんな空港か【位置と役割】

ウタパオ空港は、バンコク首都圏の主要空港とは役割が異なる。スワンナプーム空港やドンムアン空港の代替として使われるケースは限定的であり、特定路線・特定需要を処理する地方拠点として運用されている。
タイ国内線では、プーケット、サムイ、チェンマイといった主要都市への路線が存在し、観光・移動需要はある。ただし、便数は少なく、時間帯も限定されるため、空港側も「常時多くの乗客を捌く」設計にはなっていない。
空港施設や動線を見ても、長時間滞在や乗り継ぎを想定した構成ではない。チェックイン、到着、地上交通の流れが一直線で、到着後すぐに空港外へ移動することを前提とした設計が目立つ。
そのため、ウタパオ空港は「空港自体の利便性」を基準に評価すると不満が出やすい。一方で、目的地と移動手段が決まっている利用者にとっては、合理的な空港である。
就航路線と便数の実情【国内線/国際線】
ウタパオ空港は国際空港ではあるが、取材時点での実態は「便数が非常に限られた地方空港」に近い。私が現地で確認した日は、出発便は1日わずか4便のみで、いずれも午後から夕方に集中していた。午前中の出発便はなく、夕方以降は空港全体が一気に静まる構成である。
路線の中心はタイ国内線だ。プーケット、サムイ、チェンマイといった主要観光地への直行便は現在も運航されており、特にバンコクを経由せず南部・北部へ移動できる点はウタパオ空港の明確な強みと言える。一方で、便数は少なく、時間帯によっては選択肢がない。

国際線については、ロシア方面のチャーター便が目立つものの、それ以外にも便はある。航空券検索上ではクアラルンプール便もあり、国際線ネットワークは限定的ながら存在していることが分かる。

なお、コロナ禍以前には日本からの直行便が運航されていた時期もあり、一部の日本人旅行者にとっては「昔、直接降り立ったことのある空港」でもある。
国内線(現地掲示にある3路線)
- プーケット:観光需要の太い路線で、ウタパオからでも日程が合えば南部リゾートへ一直線で移動できる。
- サムイ:便数は少ないが、サムイ島へ乗り継ぎなしで入れる貴重な選択肢である。
- チェンマイ:午後発の便があり、バンコク経由を避けて北部へ飛べるルートとして使える。

ターミナルの構造と動線について

ウタパオ空港のターミナル構造は非常にシンプルで、利用できるのはターミナル2のみである。
隣接するターミナル1は現在一般利用されておらず、利用者はターミナル2に向かうことになる。両建物は隣り合っている。

ウタパオ空港は、到着・出発ともに1階に集約された構造で、大規模空港のようにフロアが分かれていない。そのため、空港内の動線は単純で、上下移動は少ない。

チェックインカウンターは国内線と国際線で分かれているが、位置は隣り合っている。保安検査前エリアも地方空港規模で、立ち止まって見渡せば全体像が把握できる広さである。

アクセス手段は基本的に車移動が前提となるため、ウタパオ空港には広い駐車場が整備されている。周辺にはタイ軍関連施設も見られ、軍民共用空港としての性格を感じさせる。

ターミナル内にあるもの【設備まとめ】
ウタパオ空港のターミナル内施設は、全体として必要最低限である。大規模空港のように、空港内で食事や買い物を楽しむことは想定されていない。
飲食・買い物
飲食については、ターミナルに軽食やカフェ系の店舗が数軒あるのみ。

しっかり食事を取りたい場合は、空港建物の外に出る必要がある。外に出ると徒歩ですぐの所にローカル風レストランがある。


また、ターミナル正面で道路を挟んだ向かい側には、カフェAmazonとセブンイレブンがある。空港内の売店や飲食の選択肢が限られる分、飲み物や軽食、ちょっとした買い出しはここで済ませることが可能である。

到着後の待ち時間や、送迎バンを待つ間の飲料調達など、実用面ではこの2店舗の存在は地味に助かる。
Wi-Fi・SIM・両替・案内
無料Wi-Fiは提供されており、簡単な通信や調べもの程度であれば利用可能である。
チェックインカウンター付近にはインフォメーションカウンターも設置されている。
そのほか、
・SIMカード販売


・両替所(到着便の時間帯により営業)、ATM

・手荷物ラッピングサービス(150バーツ)
・喫煙所(指定場所のみ)
といった基本設備は一通り揃っている。
ただし、SIMカードはプランの選択肢や価格面で市内購入より有利とは言えず、空港での購入は応急対応と考えるべき。両替所も常時営業ではないため、事前に市内で両替しておくか、空港では最低限に留めるのが無難だ。
空港泊はできるのか?
なお、ウタパオ空港は空港泊向きの空港ではない。便は日中〜夕方に集中しており、深夜・早朝に滞在する実用的な理由がない。空港内・周辺ともに利便施設は少なく、便のない時間帯はターミナル自体が静まり返る。
総じて、ウタパオ空港は空港内で時間を潰す場所は少ない。到着後は速やかに移動し、出発時も必要以上に早く来る必要はない空港だ。
ウタパオ空港からパタヤへの移動手段

結論から言うと、ウタパオ空港からのアクセスは定時運行や常設カウンターを前提に考えない方がよい。実態としては、到着便の有無によって空港の表情が大きく変わる。
取材時、到着便のない時間帯には、相乗りバンやタクシーの案内ブース自体が閉まっている状態であった。常時スタッフが待機しているわけではなく、空港としても「人が来る時間だけ動く」運用であることが分かる。


一方、到着便が重なる時間帯になると状況は一変する。
ブースでの案内というより、到着出口前にスタッフが立ち、直接声をかけて案内する方式が中心となっていた。


相乗りバンはホテル直行型で、明確な時刻表はなく、乗客が集まり次第出発する運用。待ち時間は到着便の混雑状況次第で変動する。


タクシーは最も確実な移動手段であり、料金表も掲示されているため交渉は不要である。Grabも呼べるが、待機しているわけではないため配車に時間がかかる可能性があることは考慮すべきだろう。


大型バスについては、団体客やチャーター向けである。特に取材時(1月)はハイシーズンにあたり、ロシア方面からの利用客を中心としたチャーター・団体バスの存在感が大きかった。

個人旅行者が自由に使う交通手段ではなく、あらかじめ組まれた動線の一部である。
このように、ウタパオ空港では「ブースで選ぶ」より「到着と同時に流れに乗る」という意識を持っておくと、現地で戸惑うことはなくなるはずだ。
相乗りバンや送迎車の行き先はパタヤ市内である。
到着出口前で案内していたスタッフも、パタヤ方面のホテル送迎を前提に声掛けを行っており、行き先を細かく選ぶというより「パタヤ行きがデフォルト」だ。所要時間約1時間。バンコクと異なり渋滞は少なく、パタヤ市内で多少混み合う程度である。
実際、掲示されている案内や料金表でも、パタヤ、ジョムティエン、ナクルアといったパタヤ周辺エリアが中心となっている。一方で、パタヤ以外の方面へ向かう場合は、タクシーや事前手配の送迎を前提に動く必要がある。
日本人旅行者から見た使いどころ
日本人旅行者の視点で見ると、ウタパオ空港は一般的な国際線空港とは使い勝手が異なる。
空港内の案内、交通手段、利用客層はいずれも、あらかじめ行き先が決まっている利用者向けの設計だ。
取材時(1月)はハイシーズンということもあり、団体客やチャーター利用が目立ち、ロシア方面からの利用者が多かった。到着後は団体バスやホテル送迎にそのまま流れるケースばかりで、空港内で行き先を検討したり、交通手段を比較する人は少ない。
現在は日本からの定期直行便はないものの、タイ国内線を使ってプーケット、サムイ、チェンマイへ向かう、あるいはパタヤに直接入るための空港として割り切って使うのであれば、合理的な選択肢となる。
日本人旅行者にとってのウタパオ空港は、「初めてのタイ旅行で選ぶ空港」ではなく、目的地と移動手段が明確な人向けの空港である。
向いている人・向かない人
前提として、日本からウタパオ空港への定期直行便は現在運航されていない。
そのため、日本発のタイ旅行では、スワンナプーム空港またはドンムアン空港が最初の選択肢となる。
この前提を踏まえたうえで、ウタパオ空港が向いている人・向かない人を整理する。
ウタパオ空港が向いている人
- クアラルンプールやプーケットなど、第三国・国内都市を経由してパタヤへ入る人
- タイ国内移動の一部として、ウタパオ発着便を組み込む旅程を組める人
- パタヤ行きの送迎や相乗りバンを前提に、到着後すぐ移動する想定ができている人
- タイ渡航経験があり、空港の規模や不便さを理解したうえで使える人
ウタパオ空港が向かない人
- 日本からの初回入国で、最初の到着空港として考えている人
- 空港選択に「便数の多さ」「時間帯の柔軟性」を求める人
- 空港から公共交通で自由に移動したい人
- パタヤ以外の都市へ、そのまま乗り継ぎたい人
一般的な日本人旅行者が使う導線については、スワンナプーム空港からパタヤへの移動手段を別記事で整理している。
3空港高速鉄道計画と今後の立ち位置
タイでは、ドンムアン空港・スワンナプーム空港・ウタパオ空港を結ぶ高速鉄道(3空港連結プロジェクト)の構想が長く掲げられている。
この計画が実現すれば、ウタパオ空港は「地方の補助的空港」からバンコク首都圏と東部経済回廊(EEC)を結ぶ一拠点としての役割を担うこととなる。
ただし、取材時点では現地ではバンコク中心部と結ぶ高速鉄道が通る気配は全くなく、僻地にある地方空港にしか見えないというのが正直な状況である。少なくとも現在および近い将来でのウタパオ空港は、鉄道アクセスを前提に使うことはできない。
一方で、こうした計画が存在すること自体は、将来的にウタパオ空港の位置づけが変わる可能性を示している。交通インフラの整備が進めば、今は限定的な空港が、別の文脈で再評価される局面が来ることだろう。
補足|3空港高速鉄道計画の最新状況(2025年末時点)
ドンムアン空港・スワンナプーム空港・ウタパオ空港を結ぶ高速鉄道計画は、構想自体は維持されているものの、実際の事業は進んでいない段階にある。
公開情報によれば、2025年12月時点で契約の財務条件改訂が閣議承認待ちとなっており、必要な土地取得も完了していない。このため、建設工事はまだ開始されていないのが現状である。
また、仮に計画が再始動した場合でも、建設期間には約5年を要するとされ、完成目標は2030年へと後ろ倒しされている。この高速鉄道計画は、あくまで中長期的な構想段階に留まっている。
まとめ|ウタパオ空港は「パタヤ前提」で選ぶ空港
日本発の場合、現実的な玄関口はスワンナプーム空港、またはドンムアン空港であり、ウタパオ空港ではないのが実情だ。
一方で、
・プーケット、サムイ、チェンマイなどタイ国内線
・クアラルンプールなど近距離国際線
・パタヤ方面への移動を前提とした旅程
こうした条件が揃う場合、ウタパオ空港は成立する。
空港規模は非常に小さく、チェックインから搭乗口までの動線は短い。この点はハブ空港であるスワンナプームと比べ、明確なメリットだ。ただし、便数が少なく競争が限られるため、航空券価格はスワンナプーム発より高めになる点には注意が必要だ。
また、3空港高速鉄道計画は存在するものの、2025年末時点では建設未着手であり、完成は早くても2030年以降とされる。現時点で、ウタパオ空港の利便性が短期的に大きく変わることななさそうだ。
結論として、ウタパオ空港は「小さく、静かで、用途がはっきりした空港」だ。日本人旅行者にとっては、スワンナプームやドンムアンの代替ではなく、条件が合ったときにだけ選択肢に入る空港。それが、2026年現在のウタパオ空港の正確な立ち位置である。



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