Chua Ha(チュアハー)駅は、ハノイメトロ3号線の中でも、寺院の名を持ちながら周辺はかなり都市的な景色が広がる駅である。
駅名の由来になったChùa Hà寺は徒歩圏にある一方、駅の周囲には高層アパート、オフィスビル、商業施設が集まり、Cau Giay(カウザイ)らしい市街地の風景が続いている。
観光地の最寄り駅というより、生活と通勤の空気が強い駅であり、駅前の見た目も寺院より都市部の印象が前に出る。
この記事では、Chua Ha駅の周辺、駅構内の様子、Discovery Complexの現状を現地取材をもとに見ていく。
駅周辺|高層住宅とオフィスが並ぶ市街地

Chua Ha駅が面する Cau Giay通りは、西ハノイでも交通量の多い幹線で、朝夕は通勤・通学の車やバイクでかなり混雑する。駅周辺には高層アパートやオフィスが集まり、生活の拠点として人が多く集まる市街地になっている。

ただ、周辺人口の多さのわりに駅の利用者はそれほど多くない。大きいのは、隣のCau Giayで路線が止まっており、その先へそのまま伸びていないことだ。乗り換え先もなく、移動先によってはメトロを使う意味がない。
逆方向の国家大学駅は学生利用が見込めるが、Chua Ha駅は今のところ、Nhon側から来る利用者を受ける役割が中心になっている。高層住宅が多いエリアだけに、地下区間が開業すれば駅の使われ方はかなり変わりそうだ。
ホームと高架構造|市街地を見下ろす相対式ホーム


Chua Ha駅は、沿線の他駅と同じく相対式ホームの高架駅である。3号線の高架駅に共通する青いガラス屋根から光が入り、ホームは全体に明るい。赤茶色の柱も目立ち、この駅の見た目を少し印象づけている。
ホームから周辺を見ると、高層ビルや建物が近い距離で並び、市街地の中にある駅だと分かる。郊外駅のような抜けの良さはあまりなく、見える景色もかなり都市的。建物が周囲に詰まっているぶん、ホームに立ったときも街の密度が感じられる。

改札階の造りは他の高架駅と大きく変わらない。
ただ、利用者はまだ少なく、駅前のにぎわいに比べると中はかなり静かである。

駅名の由来|Chùa Hà寺と周辺の様子

Chua Ha駅の名前は徒歩5分ほどの場所にある Chua Ha寺に由来している。筆者自身、長年ハノイに住んでいながらこの駅ができるまで寺の存在を知らなかった。おそらく、同じ印象を持つ人も多いのではないだろうか。
寺院は決して大きくはないが、木々が生い茂り、境内には落ち着いた時間が流れている。

鮮やかな屋根瓦と古い門が目を引き、境内では地元の人が静かに手を合わせていた。若い人のあいだでは恋愛祈願の寺として知られているらしい。普段は観光地のような混雑はなく、落ち着いた空気があるが、年末年始や行事の時期には参拝客が増えるようだ。
ただ、駅前に立っても寺の存在はほとんど見えてこない。駅名だけ見ると寺がすぐ近くにあるように思えるが、実際の駅前風景はかなり都市的で、その印象は薄い。寺を目当てにこの駅で降りる人が多いという感じでもなく、市街地の中に寺がひっそり残っている、くらいの距離感に近い。周囲は交通量も人通りも多いが、境内に入ると空気が少し変わり、地元の人が通う祈りの場という感じが強かった。
Chùa Hà寺の場所を地図で確認する(Googleマップ)
Discovery Complexの現状|駅前ランドマークの変化

駅を出るとすぐ目に入る巨大な複合ビルがDiscovery Complexである。商業フロアにはかつてロッテマートや牛角などの日系レストランをはじめ、衣料品店・日用品店が多数入居し、駅開業前から周辺住民の買い物拠点として機能していた。
しかし現在の様子は大きく異なる。久しぶりに訪れてみると、テナントの大部分が撤退し、フロアは驚くほど静まり返っていた。以前のにぎわいを知っている身からすると、まるで別の建物に来たかのような変化である。近隣で買い物をするなら、AEON Mall Xuan Thuyのほうが実用的。
報道によれば、商業フロアは80%近い空室率に達しており、さらに消防安全基準(PCCC)関連の問題によって一部階で営業停止命令が出されたこともある(TienPhong, 2025年6月)。これらがテナント減少の大きな要因とみられている。また、ハノイ全体でも高層階・奥側の商業スペースは苦戦しており、Discovery Complexもその波を受けているようだ。

ただし地下にある巨大な駐車・駐輪場は稼働しており、市街地では貴重な駐輪スペースとしての役割がある。商業施設としての力は弱まっているものの、生活動線の一部としての機能は残っていると言える。
駅構内で見かけた喫煙まわりの曖昧さ
小ネタになるが、駅構内にはしっかり禁煙マークが出ている一方で、階段を上がった先、駅に入る直前のスペースには普通に吸い殻入れが置かれていた。しかも中には使用済みの吸い殻も入っていた。
構内なのか外なのか、かなり微妙な位置で、ここは大丈夫なのだろうかと少し考えてしまう。入出場の動線上にこうした場所があるのは、日本では見ない。ハノイらしい、境界のゆるさを感じる場面だった。


こういう線引きのあいまいさは、ハノイの公共空間では時々ある。細かい点だが、駅の空気をよく表していた。
なぜ利用が伸びにくいのか|Cau Giay止まりの路線構造
Chùa Hà駅の周辺は、郊外駅とは違って高層住宅やオフィスが集まり、人も多い。
それでも利用が伸びにくいのは、今の3号線がすぐ隣のCau Giayで止まってしまうからだ。市街地の中にある駅なのに、その先へそのまま行けないため、メトロを使う意味が薄い。
ただ、この状況はずっと続くとは限らない。地下区間が開業して中心部へつながれば、Chùa Hà駅の使われ方はかなり変わるはずだ。周辺には高層住宅も多く、駅前の街の規模を考えても、延伸後は今より利用が増えてもおかしくない。今はまだ中途半端に見えるが、路線がつながった後に印象が変わりそうな駅である。

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