※本記事は2025年11月時点の現地取材に基づいています。
首都ハノイの中心に位置する国鉄ハノイ駅(Ga Hà Nội)前で、メトロ3号線の地下鉄ハノイ駅の工事が進められている。
2025年11月時点ではまだ開業には至っていないが、現地ではクレーンワークや工事車両の出入りが活発で、着実に完成へと向かっている様子がうかがえる。
地上からでは見えにくい地下工区の様子を、現地取材と公式データの両面から詳しく紹介する。

ハノイメトロ3号線「ハノイ駅」とはどんな場所か
ハノイメトロ3号線(Nhon~ハノイ駅)は、市中心部へ延びる最初の路線であり、ハノイ初の地下区間を含む都市鉄道路線として建設が進められている。
総延長は約12.5kmで、そのうち高架区間が約8.5km、地下区間が約4km。3号線はハノイ中心部の主要道路を東西に貫き、都心の渋滞緩和と公共交通ネットワーク強化を目的として整備されている。
この「ハノイ駅(Ga Hà Nội/S12)」は、ハノイ都市鉄道3号線の地下区間の終点かつ市中心部の主要ハブとして位置づけられており、国鉄ハノイ駅と直結する構造である。将来的には長距離鉄道と都市鉄道の接続拠点として機能する予定であり、都市交通の結節点として重要な意味を持つ。
本区間の施工はハノイ都市鉄道管理委員会(MRB)のもと、Hyundai E&C – Ghella JVが担当している。国際機関の支援を受けながら地下構造工事が進められており、中心駅にふさわしい規模と密度で整備が続けられている。
現地取材:2025年11月時点の工事状況と街の様子

現地では、国鉄ハノイ駅の正面入り口に面するTrần Hưng Đạo通り(チャンフンダオ通り)沿いで工事が進められている。
この通りは普段から交通量の多い幹線であるが、工事エリアによって道幅が狭くなっている。それでも交通は完全には止まっておらず、バイクや車が一定のリズムで流れており、渋滞は見られなかった。市民生活と工事が共存している様子がうかがえた。
地下区間の建設は長期にわたるものだが、周囲では人々が普段通りに行き交い、街の生活リズムは保たれている。
工事エリアは金属製の仮囲いでしっかりと区画され、内部の詳細は見えないが、複数の大型クレーンが稼働し、工事車両の出入りも頻繁であることから、工事はすでに本格段階に入っており、その勢いが伝わってくる。取材時にはクレーンの吊り上げ作業や掘削機械の稼働音が聞こえ、他の未開業駅区間よりも工事の勢いが強い印象を受けた。
また、工区の広さも際立っている。国鉄ハノイ駅前からTrần Hưng Đạo通りをまっすぐ東へ進むと、ICE Hanoi(ハノイ国際展示場)付近まで工事柵が続いており、複数ブロックにわたる広大な施工範囲であることが確認できた。

沿道のオフィスやカフェ、高層ビルの出入口付近では通路が設けられ、工事の影響を最小限に抑えながら通常営業が続けられていた。特に日系企業も入居していた「Capital Tower」前では、ビルの目の前で工事が進行しているものの、通行ルートが確保されており、周辺施設が機能している様子が見られた。

施工体制と掲示情報から見るハノイ駅工区の実態

工事現場のフェンスには「Construction Site Information(工事情報掲示板)」が設置されており、英語で以下の内容が記されていた。掲示内容からは、国際協力による長期的なプロジェクトであることがうかがえる。
- Project Name(事業名): Hanoi Pilot Light Metro Line 3 Project, CP03
- Site Section(施工区間): Garage & Crossover
- Main Contractor(主要施工者): Hyundai E&C – Ghella Joint Venture
- Supervision Consultant(監理会社): Systra S.A. – France
- Employer(発注者): Hanoi Metropolitan Railway Management Board (MRB)
- Duration(工期): 127 months (starting from February 2017)
- Source of Finance(資金供与機関): Asian Development Bank (ADB)
施工区間には「Garage & Crossover」と記載されており、これは列車の折り返しや留置に使われる終端部構造を意味する。ハノイ駅工区が3号線全体の起終点として位置づけられていることを示すものだ。
また、工期が「127か月」と記載されており、2017年2月着工から換算すると2027年半ばごろまでを想定していることがわかる。
掲示内容は他の報道で示される地下区間の開業目標(2027年)と一致しており、現場表示と公的発表が整合している。
公表データが示す進捗率と開業見通し(2025年版)
2025年9月時点の報道によれば、ハノイメトロ3号線の地下区間全体の進捗率は約51%に達し、トンネルおよび地下駅を担当するパッケージ「CP03(トンネル・地下駅工事)」では64.38%が完了しているという進捗状況だ。施工を担当するHyundai E&C – Ghella Joint Ventureの現場にはベトナム建設大臣が視察に訪れ、進捗加速と品質管理の徹底を指示したことも報じられている。(出典:Vietnam.vn)
ハノイ都市鉄道管理委員会(MRB)は、地下区間を含む3号線全体の開業目標を2027年とする方針を維持している。
なお、当初の計画では2021年から2022年ごろの開業を目指していたが、トンネル掘削や資金調達の遅れにより複数回延期され、現在の目標年へと修正された。引き続き国際機関の支援を受けながら工事が進められている。
これらの最新情報から判断すると、ハノイ駅を含む地下区間は主要部分の工事が進行中であり、2027年の全線開業に向けて作業が継続している段階にあるといえる。ただし、これまでのベトナム国内インフラ事業の進行実績を踏まえると、計画より遅延する可能性も残されており、実際の開業時期は今後の工事進度次第となる。
市中心部で進む大規模地下工事の特徴と印象
ハノイ駅前の工事は、市の中心という極めて制約の多い環境で行われている。周囲には国鉄駅や高層ビル、官公庁が並び、交通や住環境への影響を最小限に抑えながら作業が続けられている点が特徴である。
Trần Hưng Đạo通りに面した国鉄ハノイ駅のクラシックな外観と、すぐ前で進む現代的な地下鉄工事という対比が印象的な光景で、街の変化を実感させた。歴史的建築と未来の交通インフラが同じフレームに収まる光景は、ハノイの街の変化を象徴している。
今後の見通しと記事更新予定

本現地取材レポートの内容は2025年11月時点の取材・資料に基づくものである。今後、トンネル工事の完了、駅構内設備の設置、試運転開始など、ハノイメトロの工事の進捗が明らかになり次第、情報を更新していく。
また、開業後には「国鉄ハノイ駅との乗り換え方法」「出入口構造」「車内設備」「沿線の見どころ」などを追記し、完全版の駅ガイド記事としてリニューアルを行う予定である。
関連記事
参考リンク・資料(2025年11月時点)


