ホーチミン・メトロ1号線の終点手前に位置する「国立大学駅(Ga Đại học Quốc gia / National University Station)」は、その名の通りベトナム国家大学ホーチミン市キャンパスと直結している。しかし実際に利用してみると、観光客の多くは隣接するスオイティエン公園(Suối Tiên Theme Park)を目的に訪れており、学生街とテーマパークという全く異なる目的地が交差する駅である。鉄道ファンにとっても、ここは特別な観察スポットだ。

国立大学駅(National University Station)の基本情報|ベンタインから約35分で到着する郊外の拠点
国立大学駅のホームは相対式で、屋根はプラットフォーム部分のみを覆っており、線路上はオープンな構造になっている。雨天時には列車に雨が当たるが、これは日本の郊外に多い高架駅と同じである。むしろ東南アジアに馴染みがある人なら、バンコクのBTSスカイトレインと同じスタイルと言えばわかりやすいだろう。

完全に覆われた地下鉄型の駅とは違い、開放感があるのが特徴。
プラットフォームからの眺めは興味深い。南側にはスオイティエン公園の巨大なゲートやオブジェが迫力満点にそびえ、北側には広大な大学キャンパスが広がっている。ローカルな住宅街や緑地も多く、中心部とは異なる落ち着いた雰囲気が漂う。

改札と出口の動線|大学方面とスオイティエン公園方面
改札口は一か所のみでシンプルな構造だ。出場後は右手が大学方面、左手のExit3がスオイティエン公園方面に分かれている。

Exit3を進むと屋根付きの歩道橋があり、その先には巨大なゲートが正面にそびえ立つ。龍や黄金のオブジェが空に突き出し、プラットフォームからでも見えるほどの存在感だ。駅を降りた瞬間から非日常に包まれるような迫力があり、観光客にとっては安心感とインパクトの両方を味わえる。
詳細はスオイティエン公園公式ページ(英語)でも確認できる。

なお、公園入口付近には有料トイレ(2,000ドン)があるが、まだ新しく清潔な駅構内の無料トイレを利用する方が快適でおすすめ。

さらに、公園入口周辺にはオープンエアのカフェレストランもあり、散策途中のドリンク休憩に便利だ。観光地らしい雰囲気で、短時間の利用に向いている。

大学方面の出口は比較的落ち着いており、利用者の目的によって駅周辺の雰囲気がはっきりと変わるのもこの駅の特徴である。
駅構内の設備と雰囲気|新しい駅ならではの清潔さと注意点
駅構内は開業間もないため非常に清潔で明るい。設置されているのはチケットカウンター、自動券売機、自販機程度で、売店はない。飲み物や軽食を求めるなら、大学構内のカフェやスオイティエン公園内の店舗を利用することになる。

チケットカウンター自体は混雑しないが、改札ゲートでのチェックで列ができやすい。新しいシステムゆえにICカードの読み取りに慣れておらず、またエラー等が発生することがあり、そのたびに駅員が対応している。学生と観光客が入り交じるため、週末には特に小規模な混雑が見られる。

こうした光景は鉄道ファンにとっては「新しい路線の運用上のリアル」を観察できる場面で面白い。
プラットフォームでは、授業やイベントの時間帯に人が一気に集中し、賑やかな光景となる。

市内中心部からのバス接続|19番・93番バスで直通アクセス可能
国立大学駅はハノイ大通り(Xa lộ Hà Nội)に面しており、市内中心部から直通バスでアクセスできる。旅行者が利用しやすいのは次の2路線である。
- 19番バス:市内中心部のサイゴンバスターミナル(Bến xe buýt Sài Gòn, Lê Lai通り)から発着。ベンタイン市場近くや日本人街レタントンを経由して国立大学駅・スオイティエン方面へ直通する。観光客にとって最もわかりやすいルート。
- 93番バス:同じくサイゴンバスターミナルから発着し、19番とは異なるルートでスオイティエン方面へアクセスする。19番と合わせて本数が多く、待ち時間が少ないのが利点。

この2路線を押さえておけば、旅行者にとって国立大学駅へのアクセスは十分。
大学エリアの散策|学生気分を味わえるキャンパス体験
国立大学駅の北側には、ベトナム国家大学ホーチミン市(VNU-HCM)の広大なキャンパス群が広がっている。まるで一つの街のようなスケールで、複数の学部が点在している。
まず目に入るのは情報技術大学(UIT)の校舎。

青を基調とした建物は新しく、敷地内はオープンキャンパスのような明るさがある。

さらに進むと、社会人文科学大学(USSH)の正門で、学生たちがひっきりなしに出入りしている。

門をくぐると緑に囲まれた広い敷地が続き、ベンチや遊歩道、池などが整備されている。昼下がりには学生が木陰に腰を下ろして談笑したり、サークル活動をしたりする姿が見られる。


学内には食堂やカフェもあり、誰でも利用可能である。コーヒーや紅茶、学生に人気の**フレッシュミルクティー(trà sữa – sữa tươi)**は2万〜3万ドン程度と手頃な価格で楽しめる。実際に購入してみたところ、問題なく対応してもらえ、短い時間ながら学生生活に混じった気分を味わえた。


キャンパス内の池周辺は特に落ち着いた雰囲気で、木陰のベンチで涼む学生や、夕方にジョギングする姿も見られた。観光地的な派手さはないが、この素朴さこそが魅力であり、鉄道を使って訪れる寄り道先として十分に価値がある。
鉄道ファンの視点|大学と遊園地を結ぶユニークな駅
鉄道ファンにとって国立大学駅は「人の流れ」と「風景の対比」を楽しめる場所である。
- 相対式ホームを行き交う列車
- プラットフォームから望む遊園地と大学の対比
- 改札前で交錯する学生と観光客の姿
国立大学駅では、学生と観光客という全く異なる人々が同じ改札を使い、同じ列車に乗り降りしている。その光景はとてもユニークで、ここならではの体験として印象に残るだろう。
まとめ|国立大学駅で体験できる観光と学生街の両面性
国立大学駅は、観光と学術、二つの顔を持つ駅である。
- 学生と観光客が混ざり合う活気ある雰囲気
- 改札から直結するスオイティエン公園の迫力
- まだまだ新しく清潔な駅構内と時折発生する改札トラブル
- 大学キャンパス散策で触れられるローカルな日常
国立大学駅は学生や観光客で乗降が多く、沿線でも特に賑わう駅のひとつ。ここで降りれば、スオイティエン公園の迫力と大学街のローカルな雰囲気、その両方を一度に味わえる。旅行者にとっても立ち寄る価値の高い駅といえるだろう。
👉 ホーチミン・メトロ1号線「駅紹介シリーズ」
- スオイティエン駅
- 国立大学駅(本記事)
- (他の駅も今後追加予定)