ハノイメトロ3号線 完全ガイド|路線図・乗り方・駅一覧・開業状況まとめ

ハノイメトロ3号線は、西部の新興エリアと旧市街を結ぶ、首都の都市鉄道網における中核的な路線である。2024年に高架区間が開業し、沿線の交通環境や街並みに小さな変化が生まれ始めている。現在は地下区間の建設が続いており、2A号線との接続計画や中心部への延伸など、今後の拡張も注目されている。

本記事では、路線図・乗り方・料金・各駅ガイド・特徴・建設背景・開業スケジュール(2025年時点) まで、3号線の全体像を一つの記事で把握できるよう整理した。日常の移動に利用したい人はもちろん、都市交通の変化を追いたい人にも役立つ総合ガイドである。

ハノイメトロ3号線とは?

ハノイメトロ3号線は、西郊のニョン(Nhổn)地区から旧市街のハノイ駅(Ga Hà Nội)へ至る、全長約12.5kmの都市鉄道である。2A号線に続く ハノイ市内2つ目の都市鉄道路線 であり、今後の都市鉄道網の中核を担う中長期プロジェクトとして位置づけられている。

西側の高架区間(Nhon〜Cau Giay)は2024年に先行開業し、現在は中心市街地へ向かう地下区間(Kim Ma〜Hanoi駅)の工事が継続している。高架8.5kmと地下4kmが連続する構造は、2A号線とは異なる本格的な“複合型”の都市鉄道である。

3号線の整備目的は、慢性的な交通渋滞が続くハノイ西部〜中心部の交通負荷を軽減し、沿線の都市再開発を促進することである。高架区間だけでも、バスネットワークとの接続性向上によって朝夕の移動を改善している。

基本データ(2025年時点)

  • 運営主体: ハノイ市都市鉄道管理委員会(MRB)
  • 総延長: 約12.5km(高架8.5km、地下4km)
  • 運行本数: おおむね10分間隔(現地確認)
  • 所要時間: Nhon〜Cau Giay間で約16〜20分
  • 開業状況: 高架区間が先行開業、地下区間は建設中

路線図と全駅一覧(開業区間+建設中区間)

ハノイメトロ3号線の路線図と全駅名が掲示された駅構内ボード
駅構内に掲示された3号線の公式路線図。

ハノイメトロ3号線の路線図と駅の位置関係を把握するには、沿線全体を俯瞰して見るのが最も分かりやすい。本ページでは、開業済み区間(Nhon〜Cau Giay)と、現在建設が進む地下区間(Kim Ma〜Hanoi Station)を含めた路線図・全駅の位置を、下のマップにまとめている。

黒色のラインが3号線全体のルートであり、各駅にはピンを配置している。駅名をクリックすることで、対応する各駅ガイド記事へ直接移動できる。特に現在の終点であるカウザイ(Cầu Giấy)駅は、バスターミナルとの接続拠点として利用者が多く、駅周辺の様子はカウザイ駅ガイドに詳しい。

沿線の特徴や駅周辺の様子を詳しく知りたい場合は、マップから辿ることでスムーズに確認できる。なお、駅概要はページ下部の「各駅ガイド一覧」の項目でもまとめている。

ハノイメトロ3号線の路線図・全駅位置(クリックで各駅ガイドへ)

ハノイメトロ3号線の全駅位置(クリックで各駅ガイドへ)

乗り方ガイド(運賃・切符・改札の使い方)

ハノイメトロ3号線は、券売機の使い勝手や改札方式が比較的わかりやすく整備されており、旅行者でも迷わず利用できる路線である。本項では、駅構内の掲示情報および現地での実際の利用体験をもとに、ハノイメトロ3号線の乗り方と注意点をまとめる。

① 運行時間と本数

駅構内の公式掲示によれば、運行スケジュールは以下のとおりである。

  • 運行時間:5時30分〜22時00分
  • 平日ピーク時(7:00〜8:30 / 16:30〜18:00):6分間隔
  • 平日通常:10分間隔
  • 土日・祝日:終日10分間隔

ピーク外は10分以上待つ場合もあるため、利用時は時間に余裕を持つとよい。

② 切符の種類と料金

● 片道券(Token)

ハノイメトロ3号線のトークン乗車券。黒色の丸型ICタイプ
トークン式の乗車券。入場時にタッチ、出場時は改札に投入する。

3号線の片道券は、黒色のコイン型ICチケット(Token)が発行され、料金は区間距離によって9,000〜15,000ドンである。出場時に改札へ返却する方式である。

例(Chùa Hà駅掲示より)

  • Chùa Hà → Cầu Giấy:9,000ドン(1駅)
  • Chùa Hà → Lê Đức Thọ:10,000ドン(2駅)
  • Chùa Hà → Phú Diễn:12,000ドン(4駅)
  • Chùa Hà → Nhổn:14,000ドン(6駅)

なお、これらの例に挙げたチュアハー駅(Chùa Hà)は、3号線の中でも周辺開発が進むエリアであり、駅の特徴や周辺の街並みについてはチュアハー駅ガイドに詳しくまとめている。

● 1日券(デイパス)

  • 40,000ドン/日
  • アプリ専用で、駅では購入できない。

● 週券・月券

  • 週券:140,000〜160,000ドン
  • 月券:280,000ドン

いずれもアプリで電子チケット(Thẻ điện tử)として購入し、スマートフォンで利用する形式が基本である。

③ 券売機の使い方

ハノイメトロ3号線の券売機。英語表示に切り替え可能なタッチ式操作画面
タッチパネル式の券売機。最初に英語に切り替えると分かりやすい。

券売機はベトナム語表示が標準であるが、画面右上のアイコンから英語へ切り替え可能である。操作手順は以下のとおりである。

  1. 「Single Journey(片道)」を選択
  2. 行き先駅 → 枚数を選択し、内容を確認
  3. 現金またはカードで支払い
  4. 下部の受け取り口からTokenを取り出す

● 対応している紙幣(重要)

実際の利用では、券売機が受け付けた紙幣は以下の4種類であった。

  • 1,000ドン
  • 2,000ドン
  • 5,000ドン
  • 10,000ドン

20,000ドン以上の紙幣は使用できず、大きい額の紙幣利用の際は窓口利用が必要になる。
現金のほか、VietinBankやVisa・Mastercardなどのカード決済にも対応している。

ハノイメトロ3号線券売機の支払い案内。対応紙幣と使用方法の掲示
券売機の使い方の掲示物

④ アプリでの入場方法(電子チケット)

公式アプリでは、チケットを電子チケット(Thẻ điện tử)として購入できる。電子チケットはICカード(Thẻ)と同じ扱いであり、改札機の読み取り面にスマートフォンをかざすことで入場する仕組みである。

アプリ画面にはチケット情報がカード形式で表示され、改札ではTokenと同じ読み取り位置で処理される。現時点では3号線の改札機にQR読み取り装置は設置されておらず、電子チケットは「ICカード相当のタッチ式」として機能している。

⑤ 改札の通り方

改札は「Token(コイン型IC)」または「Thẻ(ICカード・電子チケット)」の2方式に対応している。

  • 入場:Tokenまたはスマートフォンを読み取り面にタッチ
  • 出場:Tokenは返却口に投入、電子チケットは再度タッチ

Suicaのようなタッチ式に近く、操作は難しくない。

ハノイメトロ3号線の自動改札機。ICカードとトークンに対応
自動改札機。トークンの投入とICカードに対応している。

⑥ 駅と車内でのルール

掲示されている主な禁止事項は以下のとおりである。

  • 大型荷物の持ち込み禁止
  • 生鮮食品・匂いの強い食品の持ち込み禁止
  • 危険物・可燃物の持ち込み禁止
  • 駅構内・車内での喫煙禁止
  • 6歳以下の子ども単独乗車禁止
  • 泥酔状態での利用不可

ルールは比較的厳格であり、安全運行を重視した運用である。

以上が、ハノイメトロ3号線における乗り方の概要だ。券売機や改札方式は日本の鉄道に近いため、初めての利用者でも戸惑いにくい構造となっている。

3号線の特徴と現地で気付いた点

ハノイメトロ3号線には、日本の都市鉄道やホーチミンメトロとは異なる特色が随所に見られ、現地で実際に利用すると小さな発見が多い路線である。本項では、取材時に感じた特徴を挙げ、3号線らしさを整理する。

① 駅入口は「文化シャッター」の名入りゲート

ハノイメトロ3号線の高架駅入口に掲示されている文化シャッターベトナムのロゴ
高架駅入口に掲示される文化シャッターのロゴ。全駅で共通の仕様。

── なぜハノイに“文化シャッター”が?

高架駅の出入口をよく見ると、どの駅にも 「文化シャッターベトナム」 のロゴが堂々と掲げられている。まさか日本企業のシャッターブランドが、ハノイの都市鉄道の“顔”になるとは予想外である。
(写真はCầu Giấy(カウザイ)駅の入口。詳細はCầu Giấy駅ガイドにまとめている。)

日本人だけがニヤッとするポイントだが、全駅で使われているため、3号線の隠れた名物と言ってよい。

② すべての駅にエレベーター完備

ハノイメトロ3号線の駅に設置されたエレベーターと出入口の様子
全駅にエレベーターが設置され、移動がしやすい。
ハノイメトロ3号線のエレベーターに貼られた優先利用を呼びかける掲示
“若者は階段へ” と読み取れる独特の表現。

── だが“若者は使うな”という異常に強い張り紙付き

3号線はアクセシビリティが高く、全駅にエレベーターが設置されている。
しかし驚くのはその横にある張り紙だ。

「高齢者・子ども優先。若者よ、階段を使え」

という趣旨のメッセージが書かれている。

“若者は使うな” と真正面から書くストレートさは、ベトナムらしい優先文化の表現である。日本のように「譲り合いましょう」という柔らかい表現ではなく、この直球表現は、異文化の一端としても読み物としても面白い発見である。

③ トイレはまさかの“改札外”

ハノイメトロ3号線の駅に設置された改札外トイレの出入口

── 日本・ホーチミン・2A号線とは真逆の設計

3号線では、ほぼすべての駅で トイレが改札の“外側” にある。

  • 日本 → 改札内
  • ホーチミンメトロ1号線 → 改札内
  • 2A号線(カットリン〜ハドン) → 改札内
  • 3号線 → 改札外(なぜ?)

なぜこの設計なのかは公式説明がないが、利用者の動線を考えると“ちょっと珍しい仕様”。

乗車しなくても使えるという公共トイレとしての利点もある。

④ ホームドアは未設置

── 代わりに“ポールパーテーション”+“駅員常駐”の昭和スタイル

ホームドアの内ハノイメトロ3号線プラットホーム
ハノイメトロ3号線のホーム。ホームドアはなく、ポールパーテーションが設置されている
ホームドアは未設置で、ポールパーテーションが簡易的な仕切りの役割を担う。

ホーチミンメトロ1号線が全駅ホームドアを完備しているのに対し、3号線の高架駅には現時点でホームドアが設置されていない。駅によっては、乗客を線路側へ近づけすぎないようポールパーテーション(簡易バリケード)が置かれている。

そのため、3号線では全駅のプラットホームに複数の駅員が常駐し、安全を人的管理で補っている点が特徴となる。

⑤ 駅構内の柱の色がすべて異なる

ハノイメトロ3号線の駅構内で色分けされた柱のデザイン(Minh Khai駅コンコース)
ハノイメトロ3号線の駅構内で色分けされた柱のデザイン(Phu Dien駅コンコース)

── カラフルで“駅の個性”が強い

駅ごとに柱の色がまったく違う。
青、薄緑、黄土色…と カラーパレットを駅ごとに変えている ため、構内の印象が駅ごとにガラリと違う。

方向感覚がつかみやすいという実利もあるが、単純に“歩いていて楽しい”要素である。

⑥ 折り畳み自転車をそのまま車内に持ち込み可能

ハノイメトロ3号線の車内で折り畳み電動自転車を持ち込む乗客
折り畳み自転車を持ち込む乗客も多く、生活路線としての利用が広がる。

── ハノイの“生活動線のリアル”が見える

取材中、複数回にわたり 折り畳み自転車をそのまま車内に持ち込む乗客を見かけた(袋に入れず、折りたたんだだけ)。

3号線が“日常の足”として使われ始めている背景がうかがえるポイントであり、生活のリアルさが出て面白い。

⑦ 駅ごとに分別ゴミ箱が設置

ハノイメトロ3号線の駅に設置された分別型ゴミ箱
分別型ゴミ箱が設置され、環境配慮の姿勢がうかがえる。

── ハノイの鉄道でついに“分別”文化?

どの駅にも、燃えるごみ・ペットボトルなどを分けられる分別型ゴミ箱が置かれている。

ベトナムでは分別が徹底されているとは言えないが、3号線だけは“分別がんばってます感”が漂う。
利用者の民度を育てようという意図が感じられ、ちょっと微笑ましい。ちなみにハノイメトロ2A号線では普通のゴミ箱が置いてあるのみ。

各駅ガイド一覧

ハノイメトロ3号線の各駅は、開業済みの高架区間(Nhon〜Cau Giay)と、現在建設中の地下区間(Kim Ma〜Hanoi Station)の2つに分かれる。本一覧では、各駅の位置づけ・特徴・周辺環境を簡潔にまとめたうえで、詳細ガイドへのリンクを掲載している。

高架区間はすでに日常利用が進んでおり、駅ごとに“街の個性”がはっきり現れている。一方で、地下区間は中心市街地に直結する重要区間であり、開業後の交通ネットワークを大きく変えるポテンシャルを持つ。

路線全体の雰囲気や沿線の違いを知るには、駅ごとのガイドを読み比べるのが最もわかりやすい。それぞれの駅リンクから、現地取材に基づいた写真とレポートを確認できる。

🟩 高架区間(Nhon〜Cau Giay)|開業済み

駅名概要記事リンク
ニョン駅(Nhon)ハノイ西端の新興タウンに立つ始発駅。高架から始まるメトロの旅はここから。ニョン駅ガイド
ミンカイ駅(Minh Khai)緑の多い住宅エリアに位置し、落ち着いた生活圏の中にメトロが初めて通る“地元の駅”。ミンカイ駅ガイド
フーディエン駅(Phu Dien)小規模な工場や研究施設が点在し、生活と産業が混ざり合う駅。フーディエン駅ガイド
カウディエン駅(Cau Dien)地元市場のざわめきが届く生活の駅。メトロが加わり街が少しずつ変わりつつある。カウディエン駅ガイド
レドゥックトー駅(Le Duc Tho)大通り沿いに整備された“新興エリアの玄関”。住宅とオフィスが増え、沿線の中でも発展が早い。レドゥックトー駅ガイド
国家大学駅(National University)学生街と大型商業施設が隣り合う活気の拠点。若者が集い、生活利便も高い駅。国家大学駅ガイド
チュアハー駅(Chua Ha)高層ビルが並ぶ都市型エリアの駅。生活密度は高いが、路線構造上利用は控えめ。チュアハー駅ガイド
カウザイ駅(Cau Giay)都市中心部への主要アクセス拠点。周辺は商業エリア。カウザイ駅ガイド

⬜ 地下区間(Kim Ma〜Hanoi Station)|建設中レポート

駅名概要記事リンク
キンマー駅(Kim Ma)高架→地下の切替点。Ba Đình区中心の商業エリア。キンマー駅ガイド(開業前)
カットリン駅(Cat Linh)Hao Nam通りに位置し、将来的に2A号線との接続予定。カットリン駅ガイド(開業前)
バンミュウ駅(Van Mieu)文廟の最寄り駅。旧市街南側の歴史エリアと中心街を結ぶ地下駅。バンミュウ駅ガイド(開業前)
ハノイ駅(Hanoi Station)国鉄駅との乗換え拠点。中心街の玄関口。ハノイ駅ガイド(開業前)

2A号線との接続計画と今後のネットワーク

ハノイメトロ3号線は、既存の都市鉄道である2A号線(カットリン〜ハドン)との接続が計画されている。両路線は現在、地上・地下で別々の構造だが、将来的にはカットリン駅を起点とした乗換導線の強化が想定されている。

現時点では、2A号線のカットリン駅は高架、3号線側は地下構造となる計画であり、地下連絡通路の建設が構想段階にある。完成すれば、西側エリアから旧市街・中心部へ向けた移動が大幅に効率化される。

ハノイ市では、3号線を軸に以下の路線整備が進められている。

  • 2号線(ノイバイ空港方面):長期構想として空港アクセスの強化を担う路線
  • 5号線(ホアラック方面):西側の新都市・産業エリアを結ぶ計画路線
  • 2A号線延伸案:南西方向の都市成長に合わせた将来検討

これらの路線が順次整備されることで、3号線は都市鉄道ネットワークの結節点として機能し、ハノイ全体の移動パターンを大きく変える存在になる。

ハノイ交通ガイドでは、各路線の最新進捗、空港アクセス、主要バス路線など、ハノイの公共交通網に関する情報を継続的に更新していく予定である。

国際支援と建設背景

ハノイメトロ3号線は、欧州の支援を軸とした都市鉄道プロジェクトである。フランス政府開発庁(AFD)、欧州投資銀行(EIB)、アジア開発銀行(ADB)といった国際機関が主要な資金供与者となり(①)、ベトナムの都市鉄道整備の中でも国際色の強い路線として位置づけられている。

設計・監理はフランスのシストラ(Systra)が担当し、車両は同国アルストム(Alstom)製。駅構造・車内レイアウト・案内サインに至るまで欧州の標準に則った設計が採用されており、先に開業した2A号線とは技術体系や運行思想が大きく異なるのが特徴だ。

一方、2A号線(カットリン〜ハドン)は中国政府支援によるEPC方式で建設され、中国輸出入銀行(China Eximbank)が約2.5億ドルの借款を供与し、中国鉄建(CREC)が施工を担当した(②)。信号・車両・システム一式が中国規格で統一されており、都市鉄道としての性格は3号線とは明確に区別できる。

さらに南部ホーチミン市の1号線(ベンタイン〜スオイティエン)は日本のJICAが支援するプロジェクトであり、車両・信号・電力システムなど、主要な技術要素は日本企業が担当している(③)。

このように、ベトナムの都市鉄道ネットワークは
欧州(3号線)/中国(2A号線)/日本(ホーチミン1号線)
という複数国の支援が併存する、多国間協力の典型例だ。

技術標準・設計思想・運行オペレーションが路線ごとに異なる点は、ベトナムの都市鉄道がまだ形成途上にあることの表れであり、同時に今後のネットワーク統合に向けた課題でもある。ハノイメトロ3号線は、その中でも欧州主導の最新プロジェクトとして、都市の公共交通モデル転換を象徴する存在である。

出典:
AFD – Hanoi Metro Line 3 ProjectEIB Project 20100358
Urban Transport Magazine – The new metro in Hanoi starts revenue service (2021)
JICA – Ho Chi Minh City Urban Railway Line 1 Project

開業スケジュールと最新状況

ハノイメトロ3号線の建設は、長らく工事遅延が続いてきたが、西側の高架区間(ニョン〜カウザイ間)は2024年に正式開業し、現在は日常的な運行が定着している。
沿線の住宅開発や大学エリアの運行により、利用者数も緩やかに拡大している。

一方で、中心部の地下区間(キンマー〜ハノイ駅)は依然として建設中であり、地盤条件や用地調整の影響もあって工期は後ろ倒しが続いている。
ハノイ市都市鉄道管理委員会(MRB)の最新発表によれば、全線開通は2027年頃になる見込み。

区間別の進捗状況(2025年最新)

区間状況開業・見込み
ニョン〜カウザイ(高架区間)2024年開業済み営業運転中
キンマー〜ハノイ駅(地下区間) 工事進行中2027年開業予定

高架区間ではすでにダイヤが安定し、運行本数の拡充や混雑緩和が進んでいる。
今後、地下区間が開業することで、旧市街中心部への鉄道アクセスが一気に改善し、都市交通の利用メリットが大きく拡大すると期待される。

なぜ地下区間(キンマー〜ハノイ駅)は遅れているのか

当初計画から大きく遅れている地下区間の工期が長期化している背景には、複数の要因が重なっているとされる。現地の状況や報道で確認できる範囲では、以下のような課題が指摘されている。

1. 地盤条件と施工環境の難しさ(構造的要因)

  • 旧市街周辺は地下水位が高く、地層が複雑で掘削後の安定化に時間を要する。
  • キンマー通り・バンミュウ周辺は道路幅が狭く、仮設ヤードや重機の配置に制約がある。
  • 建物が密集しており、振動・沈下対策を慎重に行う必要がある。

2. 用地取得・補償手続きの長期化

  • 商店・住宅が密集するエリアで、移転や補償交渉に時間を要している。
  • 仮囲いの設置や交通規制が段階的にしか行えず、工事が一度に進められない区間がある。

3. 予算・資金供給の遅れ(複数報道で指摘)

  • 都市鉄道事業全体で当初予算の超過や資金供給の遅れが報告されており、3号線でも同様の課題があるとされる。
  • 支払い承認や借款手続きに時間がかかるケースがあり、工程に影響が出たとみられる。

4. COVID-19による施工・調達の停滞(報道ベース)

  • パンデミック期に作業員不足や資材調達遅延が発生したとの報道がある。
  • 一部工区では作業中断や縮小により、後工程が押したとされる。
    ※ただし、影響度の詳細は公式発表ベースではない。

2025年時点の工事の様子(現地観察ベース)

2025年11月に確認した範囲では、地下区間の各駅で外装工事が進んでおり、周辺では資材搬入・換気設備の設置などが確認できる。駅間トンネルでは掘削後の仕上げ作業が続いている様子が見られる。

一方で、駅周辺の交通規制は続いており、引き続き工事が進行中であることが分かる。
※進捗状況の詳細や開業時期は、MRB(ハノイ市都市鉄道管理委員会)の公式発表を参照する必要がある。

延伸工事(Kim Ma〜Hanoi駅)の現在地

ハノイメトロ3号線の中心部に位置する キンマー〜ハノイ駅(地下区間) では、現在も建設が続いている。地盤条件や用地調整、施工スペースの制約など複数の要因から、高架区間に比べて工事は段階的に進められている。

各駅周辺では、仮囲い・覆工・出入口構造の設置 など地下工区特有の工事が確認でき、外観の一部が形になり始めている箇所もある。ただし、進捗は駅によって差があり、詳細な状況は現地で確認する必要がある。

本サイトでは、以下の各駅ガイドで 個別の進捗状況(2025年時点) を紹介している。

延伸区間が開業するとどう変わるのか

地下区間が開業すると、3号線の利便性は現在より大きく向上する。

  • 旧市街中心部(ハノイ駅)への都市鉄道アクセスが初めて実現する
  • カットリン駅で2A号線と乗り換え可能となり、東西移動の鉄道ネットワークが形成される
  • 渋滞の多い幹線道路の利用を避けられ、移動の所要時間が安定する
  • 観光客の移動が容易になり、周辺の都市再開発も進む可能性が高い

これらの変化は、都市鉄道ネットワークの段階的整備が進む際に一般的に見られるものであり、3号線でも同様の効果が期待される。

よくある質問(FAQ:運賃・運行・乗換え)

Q1. ハノイメトロ3号線はいつ開業しますか?

高架区間(ニョン〜カウザイ)は2024年に開業済み。
一方、地下区間(キンマー〜ハノイ駅)は現在も工事が継続しており、ハノイ市都市鉄道管理委員会(MRB)の発表では、全線開業は2027年頃と示されている。

Q2. 市中心部に近い駅はどこですか?路線図はどこで見られますか?

旧市街方面へ最も近いのはハノイ駅(S12)。
また、日本人居住区に近いキンマー駅(S09)も、リンラン通り・日系店舗密集エリアにアクセスしやすい。

路線全体の位置関係は、上部の 「路線図と駅一覧」 で確認できる。

Q3. 料金や運行時間はどのくらいですか?

片道料金は 9,000〜15,000ドン(区間距離による)。
運行時間は 5:30〜22:00 であり、ピーク時間帯は 6分間隔、通常時は 10分間隔が目安。

詳しくは上部「乗り方ガイド」にまとめている。

Q4. 空港(T1/T2)から3号線へアクセスできますか?

現在、ノイバイ国際空港とハノイメトロ3号線は鉄道としての直接接続はないが、07番・90番の市バスを利用すると最もスムーズにカウザイ(Cau Giay)駅にアクセスできる。

  • 07番(T1 → Cau Giay駅前)
     最もわかりやすく、駅前バスターミナルが終点。
  • 90番(T1/T2 → キンマー、カットリン方面)
     空港 → 市内の往路ではCau Giay駅前を経由する。
     ※市内 → 空港の復路では別ルート(Đào Tấn 通り側)を通るため、停留所の位置が異なる。
  • 86番(空港 → 旧市街・ハノイ駅)
     現在は3号線に接続しないが、地下区間(ハノイ駅)が開業すれば接続ルートとなる見込み。

→ 空港から3号線に乗り換える場合は07番または90番が適している。

Q5. 2A号線との乗り換えは可能ですか?

現時点では未接続。
3号線の地下駅である Cat Linh(S10) と、2A号線の高架駅Cat Linhは隣接しており、将来的な連絡通路整備の構想が示されている。

現段階では構内間の徒歩移動による乗り換えはできず、開通後の計画が待たれている。

Q6. 大きな荷物(キャリーケース)は持ち込めますか?

キャリーケースの持ち込みは可能。
ただし、駅掲示によると 大型荷物(規格外サイズ)や生鮮品、可燃物の持ち込みは禁止とされているため、一般的な中型スーツケース程度までが現実的である。

Q7. 旅行者でも安全に利用できますか?治安や混雑は?

構内・車内は比較的落ち着いており、治安面で大きな問題は確認されていない。
朝夕には学生・通勤者で混雑するが、ホームには駅員が常駐しているため利用はしやすい。
夜間は利用者がやや少なくなる傾向がある。

関連リンク・関連記事

まとめ|ハノイメトロ3号線のこれから

ハノイメトロ3号線は、首都の都市交通が次の段階へ移行しつつあることを示す象徴的な存在だ。高架区間の開業によって、都市の西側では鉄道という移動手段がようやく日常に入り込み始めた。沿線ではカフェや住宅の新規開発が進み、鉄道がもたらす時間の確実性や移動の快適さが、生活者の選択肢を静かに変えつつある。

一方で、中心部に伸びる地下区間は依然として建設途中であり、鉄道網全体としての完成度はまだ道半ばである。旧市街と新都心を結ぶ動脈としての役割は、地下区間が開業することで初めて本格的に機能する。駅間の接続、他路線との連携、国鉄駅との乗継ぎが形になったとき、3号線は単なる“新しい交通機関”から“都市の骨格を支える基盤”へと姿を変えるだろう。

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